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アイのカタチ
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今から2時間ほど前のこと。
仕事が終わった俺は弟の大志と会っていた。
もともと仲の良い兄弟で
大志がこの街に来てからはよく飲みに行っていた。
今日もばっちりメイクの大志。
傍から見れば少し背の高い女性に見えるだろう。
「なに…飲まないの?」
麦酒を片手に大志は問いかける。
「んー…、気分じゃない」
俺のジョッキは3分の一も減っていなかった。
居酒屋の中は かなり暑い。
さっきまで喉が乾いていたはずなのに、
麦酒を飲みたいと思わなかった。
と言うか、思えなかった。
「……佐伯さんとなんかあったんだ」
弟には何でもお見通しらしい。
大志はニヤニヤして 薄らと笑みを浮かべる。
本当…性格悪いヤツ。
「まぁとりあえず話してみなよ。
陽菜が聞いてあげる。」
そう言った大志は なんだか嬉しそうだった。
**
あの後すべて話すと、大志にはひどく怒られた。
大志の言っていたことは正論だった。
『好きなら手放しちゃダメだよ』
まっすぐ俺の目を見て 大志はそう言った。
帰り道。
居酒屋から駅までの途中には、
自分が働く会社がある。
社内をみるともう電気は付いていなかった。
流石に…帰っちゃったよな。
「良太ー?」
大志に呼ばれハッとする。
今日の俺は やはりおかしい。
頭の中は佐伯さんのことばかりだ。
「…あぁ、今行く」
人ごみを掻き分け大志の元へと向かう。
「…平気?」
元気のない顔を見たからか 大志は心配そうに俺を見る。
「ん…」
小さく返事をして 空を見上げる。
今日は満月が綺麗だ。
佐伯さんもこの月を見ているだろうか。
会いたい。
触れたい。
抱きしめたい。
この気持ちを、伝えたい。
そう思った時。
「ッ……良太…!」
確かに背後で聞こえた。
愛しい人の、俺を呼ぶ声。
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