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懐かしい感触
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「大丈夫か?」
あの後 僕の部屋に来た浩之は
僕が落ち着くまで なだめていてくれた。
奥さんは出張らしく 1週間は戻ってこないらしい。
「あぁ、…すまない」
涙を拭いていたせいで 目尻がヒリヒリと痛んだ。
それだけじゃなく もちろん胸も痛い。
相沢とは本当に終わってしまったんだと
改めて実感が湧いてくる。
そして、少しの罪悪感。
相沢に別れを告げられたからと言って
既婚者の元恋人を家に入れるのはどうかと思ったからだ。
「今日、泊めてくれないか?」
僕がうつむいていると 浩之はそう言った。
返事に困っている僕の頭を撫で、浩之は続けた。
「今、信幸のこと一人にできない」
心配するように僕をのぞき込む浩之の瞳には
泣きだしそうな僕の顔が映っている。
正直 一人は怖かった。
誰かにそばにいて欲しい気分だった。
「俺のこと、都合良く利用していいから」
浩之は僕を抱きしめながら そう告げた。
懐かしい香り。
懐かしい鼓動。
懐かしい温もり。
「……うん」
おずおずと背中に腕を回し、そっと目を瞑る。
僕は 浩之を利用した。
自分の寂しさを埋めるために。
不思議と後悔はしていなかった。
浩之は 昔から優しいヤツだった。
高校時代。
僕は自分が普通ではないことに気づいていた。
そのことを告げても浩之は僕を軽蔑しなかった。
僕が好きな男に告白し 罵倒された時には
今日みたいに泣き止むまでそばにいてくれた。
そんな浩之だから、好きになった。
そんな浩之が、好きだった。
「信幸…」
赤ん坊をあやす様に
浩之は僕の背中をポンポンと叩く。
変わらないな…、浩之は。
そんなことを思いながら 眠りに落ちた。
ありがとう、浩之。
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