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懐かしい感触
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静かな社内に残っているのは僕ら二人。
パソコンに目を向けていても その奥の人物につい目が行ってしまう。
長くて骨ばった指。
少し茶色がかった髪。
一直線に結ばれた、薄い唇。
整った横顔。
そんな彼と二人きりになるのは極力避けていた。
それは別に気まずいからという理由ではない。
この胸の鼓動が聞こえてしまうんじゃないかって、
好きって気持ちが伝わってしまうんじゃないかって。
そんなことあるはずないのに、考えてしまう自分がいた。
「これ、終わりました」
彼が渡してきたのは昼間、僕がばらまいてしまった資料だった。
その資料を見れば、あの時のことが鮮明に思い出される。
指が触れた。
それだけのことなのにひどく動揺してしまっていた自分。
そんな僕を見て、どこか悲しそうな顔をした彼。
「ありがとう、…お疲れ様」
彼の顔が見れない。
さっきまでは凝視していたくせに、彼がそばに来ればこのざまだ。
「…佐伯さん」
急に名前を呼ばれ、ハッとする。
心臓は鳴り止まないまま。
「アンタ見てると…苛々する」
顎をつかまれ、強引に口づけをされる。
ぬるりと入ってきた彼の舌が、荒々しく僕の口内を犯していた。
「ん…ぅ、……ゃ…んッ」
必死に彼を押し返しても、びくともしなかった。
それどころか僕の口から漏れるのは鼻にかかった甘ったるい声だった。
「ッ…ぅ、ん……ぅ゛」
どうすることもできなくなった僕は、涙を流した。
彼と出会ってから僕は、さらに泣き虫になったように思う。
「……さ、佐伯さ…」
何か言いたげな彼を残し、荷物を持って会社を後にする。
階段を駆け下りて、全力でロビーを走った。
そのおかげか、涙は乾いていた。
どうして彼はあんなことをしたのか、僕にはわからなかった。
お似合いの 可愛い彼女がいるのに。
僕なんかに構うことなんてないのに。
あぁそうか。
僕は“遊び”なんだっけ。
それでも内心、喜んでいる自分もいた。
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