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指先の熱
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「え!?…ちょ、な…泣かないで下さいよぉ…」
「……ぅ…う゛ッ」
おどおどとした彼女を前に涙は溢れるばかりだ。
最近僕はよく泣いているような気がする。
「あぁ…も~!!」
突然の大きな声にびくりと肩が震えた
彼女はカバンから綺麗な刺繍が施されたハンカチを取り出し僕の涙を乱暴に拭いた。
そしてそのハンカチを僕に手渡した。
「メソメソ泣いてんじゃねーよ!!」
彼女の怒鳴り声は男のようだった。
その声に恐怖を感じ、涙はより一層溢れ出す。
「ず…すみまぜん…ッ」
ぺこぺこと頭を下げて、鼻を啜る。
彼女から渡されたハンカチはいつの間にか涙でしっとりとしていた。
そんな時。
「なに…してんの…?」
声がした方を向くと、そこには相沢がいた。
相沢の顔はハッキリとは見えないけれど、引き結ばれた口からは怒りが滲み出ている。
「げ、来ちゃったよ…」
バツの悪そうな顔をする彼女と
無言で近づいてくる相沢。
そして、気が付けば目の前には相沢の背中があった。
「佐伯さんのこと、泣かしてんじゃねーよ」
そう言って彼女を殴った。
「っいてーな、このクソ兄貴。ちょっとからかっただけじゃん!!」
えっと…もしかして
弟さん…大志くん?
全然男に見えないんですけど…。
驚きのせいか涙は止まっていた。
「あ、あの」
喧嘩を止めようと発した言葉は相沢の声によってかき消された。
「佐伯さんのこと泣かせていいのは、俺だけなんだよ」
ドキリと胸がざわつく。
だけどそのざわめきが、心地のいい。
「はぁ…そんくらい素直になったら?」
そう告げ、大志くんは踵を返す。
「もちろん、佐伯さんもね」
大志くんは振り返らずに言った。
大志君の背中は、勇ましく見えた。
「…佐伯さん」
振り返った彼との距離は数十センチ。
「あ…いッ、……んぅ」
さっきとは違う、優しいキス。
嬉しい、嬉しい。
僕はもう、逃げたりしないよ。
「ん…佐伯さん、好き」
腰に回された、大きくて温かい手。
耳に入ってくるのは、優しい囁き。
「僕も…君が好きだ…、んッ…ぅ」
思いを告げれば、相沢は嬉しそうに唇を重ねてくれる。
時間も場所も忘れて ただただ相沢とのキスに酔いしれた。
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