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部長の苦悩
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「いただきます」
桐谷と向かい合うように座り そう言って手を合わせる。
野菜がゴロゴロ入ったカレーは 食欲をそそり
ポテトサラダのマカロニに懐かしさを覚えた。
亡くなった母がよく作ってくれたものに よく似ている。
「口に合わなかったら…すみません」
不安そうに俺が食べるのを見つめてくる桐谷。
スプーンを手に取り まずカレーを口にする。
…そういえば、久しぶりに食べたな。
俺は思ったことをそのまま言葉にして伝えた。
「いや、美味いよ」
そう言って微笑めば ぱっと嬉しそうな顔をして。
忙しいヤツだな、なんて思った。
「…よかった、です」
安心したのか彼もカレーを食べ始める。
すると自然と会話がなくなり 部屋は静寂に包まれていく。
テレビは寝室にのみ置かれており
リビングダイニングにはない。
俺よりも大きな部屋で暮らす彼は
寂しくはないのだろうか。
一人きりのこの部屋は怖くはないのだろうか。
時々そんなことを考えては 横目で彼を盗み見ていた。
**
「シャワー、先にどうぞ」
彼がそう告げたのは 俺が食後のデザートとして出されたプリンを食べ終えた時だった。
突然の言葉に特に驚きはない。
元はといえばその為に来ているのだ。
「…泊まって、いきますよね?」
そのセリフには“抱いて欲しい”という
彼の本心が隠れていて。
断られるのではないかという不安と
今夜のことに対する期待とが混じった目で見つめられた。
「そうするよ」
この言葉には“いいよ”という
受諾の意味も込められている。
そのことは彼もわかっているのだろう。
にっこりと笑い、僅かに頬を赤く染めた。
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