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恋の痛み
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“初恋”は叶わないと言うけれど
本当にそうなのかもしれない。
「…馬鹿、だな」
部長のいなくなったベランダ。
閉ざされた扉は 部長の心を表してるようで。
「はは…」
灰色のコンクリートに 黒い染みができていく。
拭うこともせず、我慢することもせず。
溢れてくる涙が止まるまで 一人肩を震わせた。
この感情が恋だと気がついたのは彼、
橘 宗司(タチバナ ソウジ)と四度目に身体を重ねた時だった。
きっかけなんて 明確にはわからない。
だけど“落ち着く人”だと思った。
そばにいるだけで 心が安らいで、
そばにいるだけで 穏やかな気持ちになる。
そんな人と 一緒にいられたら、と思った。
そう、願っていた。
けれど現実はそう上手くはいかない。
始まりが始まりだったから
“そういう関係”になってしまって。
“好き”という一言も 愛の言葉も
彼の口から聞くことは出来なくて。
セックスをする度に思い知らされる。
僕は 部長にとって“セフレ”でしかないんだと。
でも それでも僕は良かった。
好きな人とキスをして 抱きしめて セックスをして 、
それだけで十分幸せだった。
これ以上 何も望まなければ、何も欲しがらなければ、
きっと僕達の関係が壊れることなんてなかったのに。
あんな、部長を試すみたいな質問をして。
結局はこれだ。
僕が勝手に好きになって 終わりの原因を自分で作って。
ただ好きで、部長が好きで。
そばにいたい、それだけなのに。
こんなにも あなたが好きなのに。
「…宗司…さん、…そ…じ……さん…ッ」
“恋”というのは どうしてこんなに苦しいのだろう。
“好き”というのは どうしてこんなに切ないのだろう。
あなたを思う度に 胸が苦しくなる。
あなたの名前を呼ぶ度に 会いたくなって。
あなたの感触を思い出す度に 愛しくなる。
あなたに触れて欲しい。
あなたに抱いて欲しい。
あなたに好きになって欲しい。
あなたにそばにいて欲しい。
高望みだってことは わかってる。
好かれる資格なんてないって わかってる。
もう二度と抱いてもらえないことだって。
触れて 抱きしめて キスをしてもらえないことも。
全部わかってるよ。
「…す…き…です…、あなたが…すきですッ…」
伝えられなかった想い。
胸の中で膨らんでいく想い。
何にも変えられない想い。
その想いを口にすれば
何かが変わるんじゃないかと思った。
あなたに伝えることが出来たなら
また違った未来があったのかもしれない。
だけどもう、今更遅いよね。
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