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父
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僕には記憶がない。
今までどんな事をしてきたなんてなんにも覚えてない。
でも全てさっぱり忘れてる訳じゃない。
自分の名前、そして父さんの事は記憶に残ってる。
そりゃそうか…だって、多分もう3年以上は父さんとしか顔を合わせてないし。
父さん以外の人なんて僕は知らないし…
ああ、1人いた。
顔は思い出せないけど…
僕の母さんの事を。
そうだよ、あの人が原因なんだから。
忘れそうだったけど。
母さんはたしか…僕が10歳位の時に死んだ。
僕がトラックに轢かれそうになったの。
そして僕を庇って代わりに死んだの。
多分優しい人なんだと思う。
誰かの為に自分の命を賭ける人なんてそうそういないと思うから。
よくわかんないけど。
そしてそれから父さんは僕の事を嫌いになった。
僕のせいで母さんが死んだからって。
それから父さんは家に帰ってこなくなった。
僕を置いて。
お金は置いていってくれたから父さんはやっぱり優しい人なんだ。
それからの事は覚えてない。
でも僕が高校生?になってから父さんと偶然顔を合わせた。
何処で会ったなんて覚えてないけど。
でも父さんのあの時の表情だけは覚えてる。
「柚…」
って愛しい物を見る目をしてたから。
そして父さんは僕を彼の新しい家に連れて行って貰った。
そして僕をすごく優しく扱ってくれた。
僕が「父さん?」って声をかけるまでは。
僕の外見は母さんに似ていたから。
父さんは僕が母さんだと思ってたらしい。
それから父さんは怒った顔をして僕を真っ暗な部屋に閉じ込めて、僕に暴力を振る舞うようになった。
当時の僕はまだいろんな感情を持っていたから。
多分僕は痛いとも怖いとも感じたんだろう。
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