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新しい光
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初日だからってやっぱり見学だけじゃダメで、フロアの掃除、スタッフルームの掃除、お昼ご飯のパシリにあきらさんとメイク道具の手入れをした。
普段動いてなくて、他人とも会話をしない僕からすれば人生一の働きだと思う。
あきらさんは、今日はお化粧のお仕事があんまり入ってないから他の人よりも長く話す機会があった。
「メイク専門だからね…たまに桐島先輩の手伝いもするけど、あの人、俺が手伝うとなんか嫌がるからさ」
あきらさんはそう言いながらちょっと寂しそうな顔をしていた。
あ、もしかして
「桐島さんと付き合ってるんですか?」
「は?」
え?
違ったのかな?
なんかいきなり怖い顔になった。
「ち、違いました?」
「違うに決まってるよ。俺、恋人…じゃないけど好きな人は他にちゃんといるし」
「ごめんなさい」
うぅ…
やっぱり無駄に口出しはしない方がいいかも。
「なんでそんな事思ったの?」
「あ、いや、その、さっき桐島さんが恋愛に悩んでたらあきらさんに相談しに行きなって言われて…なんかお二人とも仲良しですし…てっきり…」
「芹沢くんはゲイなの?」
「えっ」
「普通男同士で付き合ってるって思わないから」
「あっ…」
僕、ゲイ?なのかはわからない。
意味はわかるけど…
僕がそうなのかって言われるとよくわかんない。
僕は俊介さんしか好きになった事がないし…
「ゲイかは…わかりませんけど…好きな人は男性…なんです」
「そっか。俺は別にどうとも思わないけどさ、そういう事、俺以外に言わない方がいいよ?
世間じゃあゲイってのは気持ち悪い奴以外の何物でもないんだから」
気持ち…悪い…?
「そんなに落ち込んでもらいたくはないんだけどさ、そういうものなんだよ。」
そう…だったんだ…
男が男を好きになるのは気持ち悪い事だったんだ…
じゃあ、やっぱり俊介さんも僕を気持ち悪いと思っているのかも。
だから再婚して、僕と二人きりになるのを避けるんだ…
「芹沢くん?」
「あ、いえ、すみません…これからは…気をつけます」
「あーもう!泣かないでよ!!なんか俺が虐めたみたいになっちゃうよ!
うわ、どうしよ…うーん…えいっ」
「うわっ」
「そこで泣き止んでよね」
知らない内に泣いてたらしい僕を抱き寄せて背中をポンポンしてくれた。
あ、これ、いつか伊藤さんがやってくれたやつだ。
「いい事教えてあげる。
俺も好きな相手、男。」
「ふぇ?」
「何その反応。てかこれは俺らの秘密にしてね。バレたら怒るよ」
ちょっとムスっとしたあきらさんが可愛いと思ってついつい笑っちゃった。
「ふふ」
「なに笑ってんのかな?バカにしてる?」
「してませんよ!あきらさん、可愛いなって思って」
「いや、可愛いのは芹沢くんでしょ。見た目女の子じゃん。」
「父さんにもよく言われます」
「へぇ、気にしないんだ。お父さん良かったね、世の中にこんなに可愛い男の子は中々いないよ。自慢の息子さんだね」
自慢の息子…
そんな事ないよ。
だって俊介さんからしたら僕は邪魔者だもん。
でも、何故か今は、そんな切なさよりも、
新しい人との関わりと、
血は繋がってないのに家族のように僕を支えてくれるこの存在が暖かく感じて、
ちょっとだけ前に進める気がした。
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