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絆
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なるべく家に居たくなくて、
バイトもいつもより早く行き、
窓を拭いたり、フロアの掃除とかをしていた。
店にはまだミカさんしかいなくて、彼女は今カルテになにかを書き込んでる。
なんだろう?スケジュールとかかな?
「今日は早いね。どうしたの?」
「いえ、特にする事もないので…ミカさんは毎日こんなに早いんですか?」
「まあね。ここ、なんか落ち着くし店長にも許可されたから」
落ち着く…
確かに。
ここはなんかほんわかした雰囲気があり、落ち着くかもしれない。
ミカさんはお仕事に戻ったから僕は裏に行き、スタッフルームに入り行きにコンビニで買ったミルクティーを飲む事にした。
「おはよう。早いね」
「おはようございます!」
1人でぼーっとしてたら桐島さんが入ってきて僕の隣の椅子に座り込んだ。
「うぅ…今日は朝から暑いよね…飲み物買ってくるの忘れた」
「あ、飲みかけですが、これどうですか?」
「え?」
「ん?」
僕が飲んでたミルクティーを差し出したら驚いた顔をされた。
「ミルクティー嫌いですか?」
「あ、いやいや…ううん、好きだよ、大好き。じゃあ、一口だけ貰うね」
そう言って僕のミルクティーを取り一口だけ飲んだ。
「甘いよね」
「甘いの苦手なんですか?」
「苦手じゃないけど…友達にさ、すっげえ甘党な奴が居て、高校ん時そいつ昼飯に甘い物ばっかり食うんだよ。体に悪そうでヒヤヒヤする」
「なんか可愛いですね」
「はは、そう思うだろう?でもそいつ見た目はただのイケメン王子だよ。ギャップっての?だからよく女子共にギャアギャア騒がれてたよ。」
「モテモテですね」
「ほんとそれ。でも残念ながらそいつはホモだったんだよ。親友に恋しちゃってさ?
色々あったらしいけど、今もまだ仲良く付き合ってるんだ。」
男同士…
男同士は幸せになれないと思ってたけど、
中にはやっぱり幸せになれる人達も居るんだね。
「結婚は、海外でなんとかなるけど…子供もできないし、確かな絆ってのは無いんだよな。」
「絆?」
「うん、男女の間だとさ、まず結婚すればそれが絆になるじゃん?そして、子供ができるじゃん?離婚しようとしても子供が出来ちゃうと中々別れられないもんなんだよ。
子供を産んだ瞬間その子を育てる義務ができちゃうから。
でも男同士だとさ、子供も出来ないから別れるのも簡単なんだよ。
だから俺はあいつらをちょっと尊敬する。
お互いの愛だけで繋がってるから…
なんてね、なんでこんな話になったっけ……って、え!?」
お互いの愛だけで繋がってる…
その言葉に僕は何故か心が揺さぶられポロポロと涙を零してしまった。
「ぅぇ?なんで…だろ…」
涙を拭っても次々と出てきて、
泣き止まないとと思うのにそう簡単に涙は引いてくれない。
ここに来て泣いたのもう2回目だよ…
「芹沢くんは、なんか悩み事でもある?」
「ふぇ?」
「時々悲しそうな顔をするから。
その左手も関係するのかな?」
自分の左手に目をやると、そこには人差し指と親指しかなくて…
あ、これは俊介が僕にやったやつだと思い出し、
それはただの恐怖でしかなかったのに、
今になると、もしかしれこれが僕と俊介さんの間にある絆かもしれないと思って、
少し愛しいと思った。
身体中にあった傷や痣は伊藤さんが治してくれて、今は綺麗になくなったけど、この手だけは治りようがなくて、
これがある限り俊介さんは僕を側に置いてくれるかもしれない。
それはただの罪悪感でもいいんだ…
側に…置いてくれるなら………
「芹沢くんは、もっと楽しい恋をしていいんじゃないかな?」
「楽しい?」
「そんな辛そうな顔をするんじゃなくて、もっと心から笑顔になれるような恋。
好きな人がいるんでしょ?」
コクっと頷いた。
「でもその人は芹沢くんを笑顔にできないんだよね?」
「わかんない。でも、一緒にいたいんです」
「一緒にいたいって本当にそう思う?」
「どう…いうことですか」
「一緒にいたいってばかり思い込んでるだけで、実際は別に一緒には居たくないなじゃない?
まあ、俺の話はあんまり気にしないでもいいんだけど、俺は芹沢くんの笑った顔が見たいかな」
思い込みだけ?
解らない。
解らないのに、少しばかり納得してしまった。
納得というか、そうだったらいいなって思っただけか。
「ほら、泣き止んで?」
そう言ってポケットから出したハンカチで僕の涙を拭いてくれた。
「あ、店長!!桐島先輩が芹沢くんを虐めてます!!」
「はぁ!?」
「はぁ…桐島、お前は一体何歳になると思ってるんだ?未成年を虐めるなんて情けないな」
「虐めてませんって!!」
「桐島先輩、虐めはかっこ悪いって前にも言いましたよね?」
「お前!いい加減にしろよ!!」
「桐島…そういうプレイが楽しいのは解るが、仕事場ではよしてくれ」
「店長!!芹沢くんの前でそういう発言はやめてください!!!」
ふふ、
ここにいるとやっぱり楽しくなっちゃって、
この人達がいれば、僕はなんとかやっていけるかもって思った。
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