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《遠退く想い》11
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「どうかした?」
首を傾げ聞くルード。
「ううん、なんでもない…行こ、」
けど、ヨシの車で少し休憩出来たし…ゆっくりのぼれば大丈夫だろう。
慎重に…
そう気を引き締めるアキラ。
「うん、あ、狭いけど笑わないでね!」
「笑うわけないだろ」
ルードに答えながら階段に近づく…
「でもアキラの家と比べたらさ…」
ルードは話しながら手すりも持たず、買物袋をさげたまま一段飛ばしで階段をのぼりはじめる。
「……」
アキラは…手すりを支えに、足に余計な力が入らないよう集中して慎重に階段を一段ずつ上りはじめる。
もし階段で足が麻痺したりしたら…
支えきれず転倒して、階段を転げ落ちるハメになるから…
階段をのぼることは、アキラにとっては命がけなのだ。
そんなことはつゆしらずのルードは話しながら既に上までついていた。
「アキラ早くー!」
上から呼びかけるルード。
「うん、先いってて…ゆっくり行きたいから」
一旦止まって、息をつき微笑んでルードに答える。
「そう?じゃカギ開けて荷物いれてるから…!」
ルードはそう言って先にアパートへ戻る。
「……」
アキラはようやく半分までのぼる。
最後まで集中力を切らさないように…
一歩一歩足を進めていく…
そして、ついに…
一番上まで上りきるアキラ。
「ふぅ…」
大きく息をついて振り返り、のぼってきた階段を見る。
階段…
まだ…登れた…
けど、降りは分からない…降りの方が膝の負担は大きいから…
「階段ひとつで…こんなだもんな…」
少し自分が情けなくなって…かすれた笑いと共に零れる言葉。
ルードの家に遊びに来れるのも…
これが最初で最後だな…
付け足して思う。
……こんなこと、今に始まったことじゃない…
当たり前に出来ていたことがだんだん出来なくなる…そういう病気だから…
よく解かっているはず…
けれど…少しだけ寂しく思ってしまう。
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