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俺はお礼を言われるようなことはしていない。
でも、会長がこうやって笑ってそう言ってくれるなら、別にそれでもいいかぁなんて思ってしまった。
「じゃあ、理事長室に向かおうか」
「はい」
よっこいせと言いながら立ち上がるとまたもやくつくつ笑われる。
案外この人は笑い上戸なんじゃなかろうかと、こう何度も笑われると思ってしまう。
二人は理事長室に向かいながらも他愛ない話で盛り上がる。
本日は日曜日ということもあってか、校舎内に生徒は一人もいなかった。
「こっちだ」
校舎内に入ってすぐのところのエレベーターに乗って最上階を目指す。
エレベーターが最上階について降りれば、廊下の奥に見える理事長室。
理事長室前に着けば柏木とはここでお別れだ。
たぶん、もう二度とこのような形で話すことはないのだろうと思うと少し寂しい。
親衛隊のことがあるから会うこともできないのはわかっているがどうにも寂しいと思ってしまう。
普通の高校ならば、良き先輩と後輩の関係でいられたのだろうかとありもしないことを考えてしまう。
ここに来るまでの道中、たわいないことを話せて楽しかったのだからこれできっぱりはい、終わりとなってしまうのは、物悲しいものがある。
でも、これからも先輩後輩として付き合っていく学園でのリスクもわかりすぎていた。
いっそ無知であれば何か言えたのかもしれない。
いや、きっと言えたとしても柏木が困ってしまうのは目に見えている。
自分は困らせたいわけではないのだ。
この思いはきっとただの独りよがりでわがままなものだ。
「柏木会長、ありがとうございました」
だから、軽くお礼と会釈だけをして理事長室へと足を向けた・・・・が、進もうとした瞬間、後ろから腕をぐいっと引っ張られる。
「う、わっ」
予想外の反動に体が後ろへと流れて、倒れると思ったが背中が何かに当たる感触がしてそれ以上後ろへと倒れることは免れた。
「急に悪かった」
頭上から謝罪が聞こえて、ばっと上を向くと思ったよりも近い位置に端正な顔があり、思わずいきを飲んだ。
ゴクリと喉が上下するのを見ていたのか、春樹の喉仏を骨ばった細い指でゆっくりと撫でる。
淫靡な仕草に飲み込まれてしまいそうな雰囲気がそこにはあった。
「か、いちょう?」
なんとか絞り出した声は案の定、掠れた声。
柏木はそんな春樹を見て笑う。
「清水は顔に出やすいな」
からからと笑うその顔に、やっぱりこの人はイケメンだなぁと改めて思う。
言われた内容は貶されてるのかと思わないでもないが、そんなことも気にならないだなんてイケメンはつくづく得だなと働かない頭でそう思った。
「これ、今日の夜にでも連絡くれないか?」
これ、と言って渡されたのは一枚のメモ。
受け取ってメモをひっくり返せば、いつの間に書いたのか、メールアドレスと携帯番号だった。
「これ・・・」
貰ってもいいのだろうか?と思って柏木を見ると、意図をくみ取ったのか再度、連絡待ってると耳元で囁いて春樹がボー然としている間に元来た道を帰っていった。
耳元で囁かれた言葉が何故か頭から離れない。
「これだからイケメンは・・・・」
さらっとナチュラルにそんなたらしみたいなことをやってのけるもんだから心臓が持たないではないか。
美形にそこまで免疫ないんだぞと声を大にして言いたかった。
握ったままだったメモをポケットにしまい込んで、ふぅと息を吐いてから春樹も理事長室へと足を向けたのだった。
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