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学園に呼ばれた理由
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重厚そうな扉をコンコンと二回ノックすれば中から「どうぞ」と入室の合図が送られた。
少し緊張しながらも「失礼します」と声を掛けて入ると中は豪華の一言に尽きる。
ソファに座っている比較的若い男性が笑顔を携えて春樹を見ていた。
「そこに座って」
そう促されて理事長の対面にあるソファは座った瞬間に勢いよく体が沈み込んだ。
ずいぶん良いソファのようだがふかふか具合に慣れなくて若干座りにくい。
「よく来てくれたね。誠美学園へようこそ」
理事長は大げさに両手を広げて春樹を歓迎してくる。
ニコニコと絶やさない笑顔に理由も分からぬままこの理事長に呼ばれて、警戒というか、なんだか・・・そう、まるで腹に何か抱えているように見えて酷くうさんくさい。
この歓迎のポーズもなにか意図があるようにしか見えない。
思わず眉に皺を寄せる春樹に、それに気が付いた理事長がにんまりと笑う。
先ほどから浮かべている笑顔とは種類が全く異なったことで、春樹は全身にぞわりと気持ち悪いものが背中を掛けるのが感じられた。
それこそ、早く『殺ってしまわないと』なんて物騒な思考に囚われてしまうほどに目の前の男性は気味が悪かった。
「まぁまぁ、そんな警戒しないで欲しいなぁ」
少しため息を吐きながらもやれやれとオーバーリアクションを取りながらそう言う。
笑みはにんまりと気味の悪い笑みを浮かべながら、それでも目は笑っていないんだから性質が悪い。
「目が、笑ってないですけど?」
「ふふ、ごめんね」
春樹が突っ込めば、途端に雰囲気を柔らかくする。
なんだか、よく分からない人だ。
「さて、この学園の説明でも、と思ったんだけどね。親臨学園とそう変わりはないから説明ってほどないんだ。・・・だから、君が逆に聞きたいことがあるならそれに答えようか」
理事長は足を組みながらそう口にした。
逆に聞きたいこと・・・俺が何を聞くか分かっているくせにわざわざ俺に答えさせて何がしたいんだろうか。
目の前の人物が分からない。
どんな人間なのか。
俺にとって、害となる人物か。そうじゃないのか。
「僕を、なぜこの学園に・・・?」
「あれ、わからないのかい?」
問いかけたはずが、逆に聞き返されてしまう。
分からないから聞いてるんだけど・・・。
「この間、理事長が親臨学園の戦闘訓練の見学に来たのが理由でしょうか?」
「まぁ、そこはもちろんそうだね」
「それで、なぜ僕を?この学園の方が戦闘訓練に力を入れていることは知っています。それで親臨学園から引き抜くこともあることは知っていました。ですが、何故僕なんでしょうか?適任はもっと他に居たはずだ」
そう一気に捲し立てた春樹に理事長はくつくつと喉を震わせた。
「たしかにねぇ、普通に見ていたら適任はもっと他に居たかもねぇ。上位ランクでもないし、あの時の試合も当たりさわりなく・・・チームを組んでの戦闘には勝っていたけど、個人での戦闘にはすぐ負けたしねぇ」
「なら!「そこだよねぇ、君の面白いところ」
春樹の声に被せて、理事長はまたにんまりと笑う。
面白くて、楽しくて仕方がないとでもいうように。
その笑みを見て、思う。
あぁ、これに目を付けられた瞬間からもう逃げ場はないんだろななんて。
ただ、嫌な予感しか感じない。
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