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柏木の部屋に足を踏み入れたが、あきらかに春樹の部屋とは作りが違う。
生徒会ってのはこんなにも優遇されるもんだったのか...ときょろきょろしながら奥の部屋へと進む。
「どうした?」
「え?あぁいやーすごい広い部屋だなぁと...あっちは寝室っすか?」
「あぁ」
とにかく広い、の一言に尽きる部屋だが.....殺風景だな、とも思ってしまう。
寝に帰っているだけの部屋のイメージがしっくりくる。
もっと今時の高校生男子ってさ、物散らかしてエロ本だとかゲームだとかさぁ....いや、この柏木会長はそんなイメージ全然ないけど。
むしろ、なんで金髪なのかなってなぐらい性格とミスマッチしてるんだけど?
目が黒いから多分、染めているはず....なんだけど。
「清水?ぼーっと俺の顔見てどうした?」
「うわっ」
柏木の顔をじっと見つめながら考えていたからか、その顔が近づいてきたことに声を掛けられるまで気付かなかった。
おかげで変な声を出してしまった。
これじゃ、なんだか俺がやましい事でも考えてたみたいじゃないか
「俺の顔に何かついてるか?」
首を傾げながら聞いてくるが、正直ちょっとそれどころじゃない。
なんでか無性に恥ずかしくてたまらなかった。
「い、いやぁ...なんか殺風景な部屋だなぁって....もしかしたら寝室には色々あんのかなぁとか!たとえばエロ本とか?」
とりあえず、自分の気恥ずかしさを吹き飛ばしたくてそう聞いていた。
聞く事完全に間違えた!!
これじゃ、考えてたこととなんも変わらんじゃないか!!俺のばか!
「あ、ちょっと今のナ「俺がエロ本持ってるかそんなに気になる、か?」
ちょっと今のナシで!って言おうと思ったのに、被せてきた言葉に思わず口をつぐんでしまった。
少し笑いながら目線だけ一瞬寝室を意味ありげに見る柏木。
その姿は、ノーマルの自分でさえもぐらっときてしまう何かがあったように、思う。
「知りたければ、探してきてもいいぞ?」
「え.....」
あっけらかんにそう言う柏木に春樹はぽかんと口を開けてしまう。
なんだか、さっきの雰囲気からこうも普通の雰囲気に変わられると戸惑ってしまう。
「ただし、男の寝室に入るって意味がちゃんと分かっているならな?」
「っ!!!?」
どこか拍子抜けしていた時に耳元まで唇を近付けられて、耳と唇が触れるか触れないかの狭間で、低い声で、そう言ってきた。
どこかまた怪しい雰囲気を纏う柏木。
俺も男なんで!って突っ込みは出てこなかった。
「いいいいえ!!探しません!!すんませんでした!!」
「そうか」
もう、頭が沸騰しそうなぐらい全神経が耳元に注がれていた。
それを悟られたくなくて、流されたくなくて、雰囲気を変えるためにも春樹は大きな声で謝った。
それに対して柏木は楽しそうにくつくつと喉を震わせる。
それを見てやっと己はこの会長にからかわれたのだ、と感じた。
「ちょ、ほんと性質悪いですからね、それ」
「あぁ、すまんすまん」
ほんと、もー。とぐちぐちいいながら買った食材をがさがさと音を立ててキッチンに並べていく。
ほんと、さっきのは、俺がバカすぎた!
なにより、柏木会長が悪いと思う。
あんな性質の悪いからかいしなくったっていいのに.....
この学園では冗談で通じるものじゃない。
俺だったからよかったものの.....。
ちらっと、柏木の方に視線を向けると、こちらを見ていたのかばちっと目が合う。
逸らすのも変な気がして見つめ返していたが、お互い無言で目を合わせているのもなんか変じゃないか?と思い直し、口をひらいた。
「なんなんすかー、もう、またからかおうったってそうはいきませんからね?」
「俺はからかった覚えはないんだがな?いつだって俺は本気だぞ?」
口角を上げながらそうのたまう柏木にまたもや、心臓が暴れた気がしないでもないがそこはスルーさせていただく。
「ちょ、もうほんっとあんたが言うと洒落になんないんですってばー、キャラ最後まで、守ってくださいよ」
「キャラってなんだキャラって」
柏木は笑いながらそう突っ込んできた。
突然変わる怪しい雰囲気には慣れないが、この笑っている会長は好きだ。
だからこそ、他の生徒会メンバーの今の状況が俺には許せない。
この人のために、何かできるんなら、協力は惜しまないよ?柏木会長。
「何を作るんだ?」
対面式のカウンターに肘掛けて問うてくる会長は顔色はまだあまり良くないが、楽しそうだ。
「んー、会長疲れてるんで、食べやすいようにリゾットです」
「楽しみだ」
そう言って笑ってくる会長に胸がほっこりと温かくなる。
まだ知り合って一日も経っていないのに、会長のために動きたくなる。
この人にはそうさせる力がある。
自然と力になりたくなる、そんな人だ、柏木会長は。
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