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いざこざ
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飯の惣菜を買って家に帰ると、玄関前でカガリが座っていた。
「何してんの」
「鍵忘れた」
鞄から鍵を漁って、ドアに通す。
中に入って、一段落してから事務所入りのことを話そうと思う。
が、カガリが第一声を上げた。
「オムライス食べたい」
「めんどい」
「食べたい」
イケメンな顔して、たまに子供っぽくなるカガリ。
こういうときは、決まって何か悪いことがあった知らせ。
「今日なんかあったの」
「それがー・・・」
そう言って唸りだした。言い出し辛いんだろう。
俺は冷蔵庫から冷凍していた米を取り出して、玄関横にある、ちっさいキッチンで焼きに取りかかる。
ざざっと炒めて、ケチャップと混ぜる。
それを二人ぶん皿に移して、今度は卵を割ろうとしたとき_____
「俺就職しようかなーって」
カガリがふとそんなことを言った。
ノリじゃない。真剣な声で。
「ギター教室のオーナーから本格的に教えてみないかって誘われててさ。今はバイトだけど、社員になったら給料も上がるし」
何言い出すかと思ったら。
なんでお前がそんなこと言うんだ。
「歌手になるって夢、どこ行ったんだよ」
彼はその問いに目を反らして答えた。
「夢と現実は違うだろ。そろそろ目え覚まさないとさ」
俺はこいつが東京に行こうって俺を誘ってきたのが嬉しくて、諦めようとしてた夢を追おうって決めた。
「......なんでお前が折れてんだよ」
「だからさ、お前も早く現実見て......」
「俺今日事務所から声がかかったんだよ。後で飯食ってるときに、一番にお前に話したかった」
持っていた野菜を荒くキッチンに置く。
頭にきた。
財布とケータイをポケットに突っ込む。
直後、俺は家を出た。
あんなカガリを俺は知らない。
多分もう二度とここに戻ってくることはない。
そんな気がした。
いつのまにか、俺とあいつは違う場所を見ていたんだ。
ケータイを見ると、天野さんから着信が一件来ていた。
もう帰る家がない。
この思いを誰かに伝えたくて、天野さんに電話を入れた。
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