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役に呑まれる
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ふらふらとした足取りで、天野さんが居間にやってきた。
服は少しはだけてる。
まだ眠たいのか、欠伸をしていた。
「おはようございます、天野さん」
挨拶をして、フライパンに顔を向けた。俺の右手にはサエバシ。
もう少しで、朝食の完成だ。
と、俺の首もとにふと何かの感触がした。
ちくっとする。次いで、その付近に柔らかい、少しふわっとしたものを感じる。
いい意味で癖になりそうな鳥肌が全身を駆け巡った。
あれ、この匂い天野さん......だよな。
疑問に思っていると、俺の腰に手が置かれる。
ふと顔を首もとに向けると、そこには天野さんの頭があった。
「ちょ、何してるんですか」
天野さんってこんな人だっただろうか。
嫌、断じて否だ。
この光景を俺は知っている。
昨日、彼が読んでいた台本のワンシーンに、こんな場面があった。
「晃、可愛い」
「天野さん!?何してるんですか」
あー。完全にこの人寝惚けてる。
ただ、そんな彼に一瞬ドキっとしたのは事実。
もう少しこのままでもいいかも。なんて余韻に浸りつつ、俺の良心が声を上げた。
「起きてください」
それでも、そのままの彼。
仕方ない。火を消して、彼をソファーまで連れていく。ぼけーっとした彼を座らせて、俺はキッチンへ戻る。
「朝食出来ましたよ」
フライパンからいい匂いのするスクランブルエッグをパンに乗せ、二人分の皿を机に持っていく。
「美味しそう」
匂いにつられてか、天野さんが今度はちゃんと目が覚めてたようだった。
途端、目を丸くする彼。
「あれ、マキノくんなんでうちに? ......あ、そっか。忘れてた」
どうやら自己簡潔したらしい。笑い出す彼。こちとら笑えねえよ!
こちとら、彼の朝の態度にはヒヤヒヤさせられた。
「朝俺弱いんだよねー。なんか寝言言ってなかった?」
自覚はあるらしい。さっきの分、仕返しにからかってやりたくなった。
「やばいこと言ってましたよ。欲求不満ですね」
慌てる彼。
「ほんとに!?」
まあネタばらしもすぐするけど。
「すいません半分冗談です。晃がどうとかーって言ってましたよ」
ああー。とまた笑い出す彼。
「アニメの役に飲み込まれちゃったのかも」
やっぱりか。
でも、ここまで仕事に熱心になれるって凄いことだと思う。
昔っから、彼はずっと俺の目標だ。
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