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それから
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今回の取材内容は、次の月のアニコメでちょこっと載るらしい。
見出しは、「新入り声優の実態」とかなんとか。最近では声優を目指す人が多く、養成所の話や事務所に上がるオーディションネタが需要があるとかで、その代表に、今回俺が選ばれた。
新入り声優はそんな彼らに一番近い存在。
実力の分からない状態で顔写真やインタビューを受けるのはアンチを生み出す最善の近道としてタブー化されているらしいが、事務所側としても、知名度を上げるために取材を許可したらしい。
「来期のアニメ、私達の為にばんばん出演しちゃってね」
その言葉を背に彼女はプロデューサーを連れて部屋を後にした。
ばんばんって...。
オーディションは登竜門なのに。
どんな新入り声優も、古株声優と勝負していかなければならない。
あー。
ハンデがあるとすれば、制作費を削りたいアニメ会社は人件費の安い新入りを起用するって話だけど。
それも実力があればのこと。
ホントに厳しい声優界。
俺、やってけんのかな。
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「真鍋さん、いい子拾いましたね」
「明美ちゃんもそう思う?」
「これでも伊達に、彼ら声優の売れていく姿を記者として一番近いところで長年見てきましたからね。マキノくんは、声優界の中心になっていく素質を持っていますよ」
「というと?」
とぼけたフリが巧い真鍋さん。
私の口から言わせたいのだろう。
それもいい。
今日は気分がいい。
久しぶりに、アタリに会ったのだから。
「彼は本当に優しいわ。そんな子は同僚や、ましてや作品も、声を担当するキャラに対して等しく大事にしてくれます。そんな子が一人でも現場にいれば作品全体がまとまるんです。今、声優界にはそういう子が減ってきていますから」
そうでしょう?
真鍋さん。
口元を緩める彼。
「まだマキノくんは卵だからね。カラを破ることも、空を飛ぶことも知らない。これからキツいことも沢山あるだろう。それを乗り越えて、彼は立派な声優になるんじゃないかな」
やっと事務所を出た頃には、東京の日は傾きかけていた。
私はポケットにつっこんでいたケータイを開く。
録音時間1時間35分25秒。
本当に有意義な取材だった。
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