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役者顔合わせ
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「それじゃ、初仕事頑張っといで」
kプロの事務所にてゼネラルマネージャーの真鍋さんに挨拶をすませると、俺は打ち合わせ場所へ向かった。
今日はマネージャーの長谷川さんも付き添いでいる。
要り組んだ道を歩いた末やっとたどり着いた、ボロいアフレコスタジオ。その横の控え室へ。
これからミーティングをして、もし時間が余ればCM撮影もするらしい。
気合いが入りすぎていた為だろうか。少し早めに来たので、役者は誰も来ていないと言われた。
ロビーの受け付けで名前を伝えて、奥へ連れていってもらう。
控え室の扉を開けると、中には男の人が一人椅子に座っていた。
彼は多分、この作品の監督かプロデューサーだろう。
目があったので、挨拶をする。
「おはようございます、牧野空です。今日はよろしくお願いします」
「監督の伊集院です」
ヒゲとサングラスのよく似合うダンディーな人。
「噂はかねがね聞いてますよ、マキノくん」
そう言うと、彼は髭面でいたずらっぽく笑った。
アニメ界の三傑と呼ばれるうちの一人、伊集院監督。
直で見るのは初めてだ。
俺は、予想通り声がうまくでなくなった。脳内はかなりあらぶってる。
「新鮮な反応ですね」
新人、か。
昨日、天野さんから言われたアドバイスがある。
「その。あの......」
「なんでしょう」
にっこりとして俺の言葉を待ってくれる。天野さんは、監督に会ったらまず作品に対する思いを言えと言っていた。
伊集院監督はいい人だから、気持ちの分だけ、役者に応えてくれると。
「俺!『Libra』大好きです!だから、この作品、今まで作られたアニメの中で最高傑作に仕上げたいです!だから俺、てっぺん目指します!」
テンパってでた言葉。
それを聞いて、大爆笑する伊集院監督。
隣にいたマネージャーまで一緒になって笑いだす。
「そうですか、そうですか!それは面白い!君みたいな子、久し振りにみましたよ。では私は、マキノくんにしっかり教えていこうかね」
「ええ。是非うちのマキノにビシバシ叩き込んでやって下さい」
マネージャーまでそう言い出す始末。
「ビシバシって...、どんなんですか!」
「てっぺんを目指すのでしょう?」
「はい!」
クールに応える彼。
無駄に怖い。
と、控え室の扉が開いた。
「時間ですね」
ちらほらと集まってくる、他の役者さんたち。
メインの8人全員が集まったところで、軽く自己紹介があり、準々に席についた。中には宿人先輩もいる。
ただ、俺の中で引っ掛かったのは____________
親友セージュ役に、ワタルがいなかったこと。
オーディション。
必ずしも、万人が受かるわけではない。俺だって、受けたうちほとんど落ちた。
一緒に受かればいいなっていう、軽い思いが通じる世界じゃないんだ。
分かってる。
でも。そのワタルの変わりにいたのが_________
「おはようございます。セージュ役の天野夏樹です」
天野夏樹。俺の憧れの声優だった。
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