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チャラ男とアフレコスタジオ
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AM8:40。
新宿にあるぼろいアフレコスタジオには、「Libra」第一話を収録するにあたってのキャストが集まっていた。
余裕をもって来たはずの俺だったが、結構遅い方だったみたい。
音響さんや、現場監督さんなどに挨拶を済ませ、アフレコルームに入ると、陸さんと海さんが俺に気付いたみたいで、声をかけてきた。
「お!来たな!期待の新人声優!」
やはり、前回と同じくチャラい。金髪にピアス、女癖の強そうなローズの香水。
「おはようございます。陸さん、海さん」
目を合わせて、それから頭を下げる。
これはkプロのマニュアル本に書いてあった。「声優の闇その5、上下関係」だ。
どんなに仲が良くたって、マナーを怠ればいつ干される分からない。
「おはよ、空くん」
陸さんが挨拶をし返してきた。低音のいい声だ。
「んで、練習ちゃんとしてきたかー。期待の新人、牧野空!」
すかさず聞いてくる、チャラ男の海さん。こういうところは先輩らしい。でも、TPOをもっと考えてくれ・・・。先ほどから他のベテラン声優さんたちがこちらの会話を見て微笑んでる。恥ずかしい・・・。俺のメンタルがもたない。
「その期待の新人って他の呼び方ないですか・・・。できれば呼び方も・・・」
しょうがないなあ。という顔をして、海さんはあまり改善のされてないことを言う。
「じゃあ、新人声優 牧野空!ってどーよ」
「よければ上か下の名前で呼んでください・・・」
通じてなかった・・・。
「注文多いぞ、新人。・・・じゃあ、空豆ってどーよ!」
「どこから豆出てきたんですか!」
「お前、チビだから」
「・・・!うっさい!」
この野郎。チャラ男の癖に。
「まあまあ、二人ともその辺にして。そろそろ打ち合わせみたいだよ」
割って入ってくる陸さん。無性に心が収まらない。言い足りない。先輩だろうが、人気声優だろうがチャラ男め、覚えとけよ。
それに一連の会話を聞いていた他のキャストさんたちが、口を押えて笑っていたのを俺は見逃さない。
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