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ラジオ前
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アフレコ収録後、午後1時からそのスタジオ横の小さな録音室でラジオ放送を撮る予定。
それまでの空き時間1時間の間に昼飯を済ませて、打ち合わせをする。
現場指揮の気前のよさそうな田島さん。
パーソナリティは俺、それから今日はゲストとして天野さんも来てくれている。
俺のマネージャの長谷川さん、それから伊集院監督も見に来てくれることになった。
「新人でいきなりパーソナリティはキツイかもしれないけど、頑張ってね」
食事は、田島さんと天野さんとともに持参の弁当を食べながら打ち合わせ。
と、何かにひっかかったのか田島さんが質問してきた。
「あれ、同じ弁当ですね。偶然ですか?」
この問いに答えていいのかと天野さんをちらちと見れば、笑ながら頷いてくれた。いいよ、という合図。
「両方俺が作りました・・・」
その答えに、俺ではなく伊集院監督がたまげた声を上げる。
「空くん、君はいったい何者なんだい」
あらぬ誤解を与えているように思える。
「違いますよ!今俺、訳あって彼の家に置いて貰ってるんです・・・」
弁解はしても、監督は「それだけじゃなくて」と続ける。
「人の輪の中心にいる・・・って監督は言いたいんじゃない?」
俺に優しく微笑んでくる天野さん。
コクリと頷く監督。
そんなこと、考えたこともない。
でも、天野さんに言われたことが嬉しかった。
そこに、田島さんは割って入ってきた。声優同士の関係にあまり興味はないのだろう。
「この紙に書いてあることが今日のトークテーマです」
天野さんと二人、ざっと目を通す。
紙にはラジオの進行がどう進むかについてざっくりと書かれていた。
「ラジオは30分。途中此方で勝手に音声をカットをすることもあります。無理に話さなくても、いつも道り平常心でいてください。タブーは住所や他アニメの会話、あとネタバレくらいですね」
いったん話を区切って、トークテーマに目を移す。
「タイトルコール、それから自己紹介。キャラの説明して、トークテーマに沿って雑談。最後に今日のラジオのネタをまとめてのシメですね」
天野さんがすかさず質問をする。
「視聴者からの手紙は今見ることってできますか?」
「はい、可能です」
トークテーマの中に、視聴者からの手紙を開封するコーナーがあり、それを取りに行く田島さん。
これは多分先輩としての気配りなんだと思う。
ほんとはアドリブでいくはずのところ。それを俺が初めてだからと、始めから打ち合わせしておこうということなんだろう。
「おまたせしました。5通来てますね」
机の上にばさっと置く彼。
1つを取って中身を見てみる。
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天野さん、牧野さん。こんばんリブラ!
ついにアニメLibra放送スタートですね。
僕は中学3年生ですが僕らの周りでは今、僕らがあの世界にいるとすればどの神官になるかという話でもちきりです。僕は、剣道をやっているので青の神官かな・・・と思いますが、お二人は何の神官になると思いますか?
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面白いこと書いてるなあと思った。そういや俺も中学生の頃は友達とそんな話してた。懐かしいな。
「あの、ここに、神官の色の話があるんですけど、これってネタバレになるんじゃないですか?」
「大丈夫。これは1話放送後に放送の分だから」
俺の杞憂に、田島さんは直ぐに答えてくれた。
ざっと通して見ていく。
俺が気をはっていると、伊集院監督が俺の肩に手を乗せた。
「夏樹くんを信じてごらん。彼はもう、この仕事10年目だからね。うまくフォローしてくれるさ」
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