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2人の帰り道
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「おはようございます」
帰り道、天野さんと一緒に事務所へ寄った。
入り口には新人声優が並んで挨拶をしている。
顔を覚えてもらうためとかいう理由。俺も通った道。といっても、1週間ほどしかしてないが。
あれはメンタルに来る。無視されることもあるので。
一足先に此方に戻っていたマネージャーの長谷川さんに確認を取って、台本を紙袋に入れて手渡してもらう。
これは来週のアフレコ分。
確か来週は「夏の思い出2話」と「Libra2話」、「ラヴァニアの魔法1話」。それから、モブでオーディションに受かったのが5つ。新人としてメインを3本も貰ったことはいい方なのだと、宿人先輩が言っていたが、俺にとってこの1つ1つの役はキャラが濃すぎて、1週間に3つの役を使いこなすのが難しい。
でもこの業界に身を置く以上、そんなことを言ってられない。
今はギャラの関係上、プロの人と同じオーディションに行っても受かる可能性はある。だけど、この期間(二年)が過ぎればそれがなくなる。やっていけるのか。
いや違う。
それまでに、現場で実力をつけるんだ。
「牧野さん」
長谷川さんが俺の名を呼ぶ。
他にも何か連絡事項があるようだ。
「先日、アニメコミティアから取材されたのを覚えていますか?」
こくりと頷く。忘れるはずがない。俺がここに来て、初めて受けたオファーだ。
「今日が発売だったみたいですよ。牧野さん宛てに今月号を頂きましたので、こちらまた確認しておいて下さい」
はい、と渡された雑誌には、後半あたりに黄色い付箋が貼ってあった。
ぱらっと捲って、付箋のページを開ける。
『先日はありがとうございました。 佐野明美』と付箋に書いてあった。
俺について書かれていたのは、見開き4分の1ほどのスペース.
俺の顔写真とQアンドAコーナー。
可愛らしくデザインされて、書かれてある。
そのページには俺以外にも、ベテラン声優さんたちの苦労話や、声優になる子たちにへのメッセージが掲載されていた。
「打ち合わせは終わった?」
後ろからふと天野さんに声をかけられた。
慌てて雑誌を紙袋に入れ、後ろを振り返る。
そこには、両手にぱんぱんに台本を抱えた天野夏樹がいた。
「凄い量ですね」
「今度ゲームの録音があってね・・・」
そうか、ゲームはこれくらいの分量になるんだ。
「俺荷物少ないんでもちますよ」
「ありがと、マキノくん」
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