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胸騒ぎ
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(天野夏樹目線です)
正午過ぎ、午前の仕事が終わった帰り、事務所へ台本を貰いに顔を出した。
いつもと違うような違和感があるような。しかし、気に留めず一旦家へ戻った。
「マキノくん、もう家出たんだ」
今日は午後から「Libra」のアフレコ。現場まで一緒に行こうと思ってたんだけど。
仕事まで時間に余裕があったので、それまで家で今日貰った台本チェックをしようと思った。暫くして、ケータイに電話がかかってきた。
マキノのマネの長谷川さんだ。
今は彼が自分のマネージャーをしている訳でもないので、理由などの心当たりがない。
『もしもし、kプロの長谷川です。天野夏樹さんでしょうか?』
急用らしい。声が焦っている。
『大事な連絡をし損ねまして。牧野くんは今そばにいますか?』
どうして本人に直接伝えないのか。
「今はいないですね。どうしたんですか」
『暫く本人と連絡が取れないんです。少し事情があり心配になりまして』
嫌な予感がした。実は前から薄々感じていたことなのだが。自分の思い違いなのかと思って彼には言っていなかったこと。
「もしかして、アンチですか」
珍しくもない。ただ、マキノくんの場合は少し事情が異なる。
長谷川さんは暫く口を閉じていたが、なにか決心したように僕にことの発端を話してくれた。
『その通りです』
「口外しないでくださいね」と前置きを入れて、彼に今起きていることを、詳しく話してくれた。
『彼宛に脅迫状が何度か届いていました』
やはり。
長年この仕事を続けて、僕の周りでそれらしいことは何度かあった。
名の知れた声優と仲のいい無名、とくに新人は狙われる。だから人とは一定距離を置いてきたつもりだったんだけれど。
なんでだろう。
マキノくんには何故かそうできなかった。
「最後に彼の姿を見たのはいつですか」
『つい20分ほど前です』
こうしてはいられない。
監督にマキノと自分が遅れると連絡を入れ、歌舞伎町へと向かう。
情報を広く知っているのは、やはり彼らだ。
ごめん、マキノくん。無事でいて。
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