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久しぶりのkプロ
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(宿人先輩と再会します)
1ヶ月ぶりにkプロへ足を踏み入れた。
受付で名前を書いて、卒業生用のネームプレートを渡された。それを首から下げて、指定の実習室へ入る。
【3階 大ホール】
大きな扉を開けると、小劇場が広がっていた。
前に小さな舞台があって、100名ほどが座れそうな座席が、段々に設置されている。
卒業生ではあるが、俺自信ここへ入るのは片手で数えるほどしかなかった。
俺は声優コースだったため、演劇コースの人たちとは関わることがなかったからだ。
あるとすれば、ワタルから誘われて不定期でやっている演劇鑑賞会を覗いただけである。
kプロには俺が所属していた声優の特待生制度のように、いくつかの特待生制度がある。
特待生は授業を無償で受けれる。
俺は既卒のプロという扱いなので、今回は演劇の部門における特待生の人たちに混じって練習をさせて貰うことになった。
ただ、もうすでに事務所に所属している身なのだが、それでも特待生の実力は怖い。いつプロになってもおかしくない子が集まっているから。
舞台に近づいていくと、舞台袖からこのコースの先生が現れた。
「久しぶりじゃない、マキノちゃん」
驚いた。
そこにいたのが俺がよく見知った人だったからだ。
「林檎先生が担当してるんですか!」
俺の元講師で、一年近く授業を見てもらった。
笑みを浮かべる先生。
懐かしい。先生はいつも笑ってた。
林檎先生はkプロの名物講師である。
彼女が教えることは、演技よりも人格についてが大半を占める。
本来の自分を理解して、相手といかに折衷していくかをまず習う。
現実での相手とのコミュニケーションは演技の中でも同じだと言っていた。
特にアフレコ中の映像の中でリアルさを表現するには、そこが出来ていないといけないからだ。
「仕事は順調みたいじゃないの」
「そんな!先生のおかげですよ!」
照れたように顔を赤らめる先生。
先生は嘘をつかない。
「嬉しいこと言ってくれるわね」
今日は初日ということで他の生徒よりも20分早く来た。
他の学生が来るまでの間、今やっている演劇の説明をしてもらうためである。
「ひよっこだったマキノちゃんが、ついにイベントか〜」
入りたての俺を思い出して、先生はぽつりと呟いた。
「でも俺、舞台に立つと上がりそうで」
「そうね。慣れが必要よね。マキノちゃんが今やってる台本を一通り覚えてから、本番と同じように演劇の公開練習をしましょうか」
公開練習とは、自分たちが舞台で演技をするのを、kプロの生徒に視聴をしてもらうというもの。もちろん生徒の参加費は無料だ。
「よ〜っす!マキノっち!」
と、誰かに突然後ろから抱かれた。
でもこの声は知ってる。最近は毎日のようにスタジオやバイト先などどこかしらで会っている人だ。
「宿人先輩もここに通ってるんですか!?」
先輩は俺と同じで元林檎先生の教え子である。
しかし、俺が林檎先生の選抜クラスに入ると同時に卒業した為、授業が被ることはなかった。
だからこうやって林檎先生の授業を一緒に受けるのは、なんだかムズカゆい思いである。
「まーねー。これからの時期舞台のイベント多くなるし〜」
どうやら彼も俺と同じ理由だそう。
もう二度とここに戻ってくることはないと思っていただけに、今日は少し嬉しかった。
やっぱり、落ち着く。大阪から出てきて、ずっと気を張っていたから。
「おはようございます」
3人で戯いもない話をしているうちに、生徒が段々と集まってきた。
初心に帰ろう。
久しぶりに生徒の目線に戻ろう、と思った。
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