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頑張ろうかなって
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公開練習が終わった。
初めての舞台は、自身の中でそこまで成功したとは言えない。
練習の時ほど、余裕が無かった。
だから必要なことを最低限演じるしかできなかった。
宿人先輩は流石プロだ。そう思う場面が多くあった。
観客の目線をよく理解してる。
俺のペースを乱さずに、調和させてくれる。違和感のない会話を提供してくれる。
それだけじゃない。
俺が舞台で一番目立たなければいけないとき、自分の役をしっかりと押さえていた。
林檎先生は、数打ちゃ慣れるわよ、と授業終わりのミーティングで言ってくれたけれど、やっぱりまだ不安が強い。
帰り道。
宿人先輩が俺に声をかけてくれた。
「これから直帰?」
こくりと頷くと、にっと笑みをみせる彼。
「方向一緒だし、一緒に帰ろー」
そういうと、俺のほっぺを手で引っ張ってきた。
どうやら舞台が終わってから、ずっと顔が強張っているらしい。
「緊張しすぎ!こっち側(舞台上)はみんな仲間なんだから、マキノっち安心しなよ」
その言葉には、少し納得できた。
こっち側はみんな仲間。
そうだ。敵なんていない。
怖がる必要ないんだ。
「宿人先輩ありがとうございます」
正直にお礼を言ったつもりだったのだが、ほっぺたで遊ばれていたのでちゃんとした言葉にはならなかった。
「え、何なに! もっかい言って!」
好奇心の強い彼は、そう言って声をかけてきた。
でも、これは俺が上手くなってから、もう一度言おうと思う。
「なんでもないです!」
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