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温泉という名の
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あれから数分。
テンパって俺が水風呂に入っているところを、海さんに見り大爆笑され、次いで陸さんが申し訳無さそうにやってきた。
今は露天風呂にて海さん、俺、陸さんの順で3人並んで樽風呂に浸かってる。
「2人って、その……」
「ん〜? 何〜?」
「その…、…キ、キっ…」
キスをしていた。そう言いたい。
「キがなんて〜?」
茶化してくる海さん。
トボけるというよりは、恋愛にウブな俺を見て遊んでるような感じ。
やめてくれ……。
俺の困った顔を見て、陸さんが助太刀を出してくれた。
「海。そう空をからかってやるな」
「いいじゃん。面白いし〜」
「あのなー、海」
呆れ混じりで海さんの名前を呟く陸さん。
デリカシーを持て、と言っているようにも聞こえる。
それに反応して、海さんも態度を改めた。
「付き合ってるよ。オレと陸」
さっきは刺激が強くて、少し取り乱したけど。
でも、このことには思ったよりも驚かなかった。
男同士に関しては別に偏見はない。
でもそれ以上に思ったことがあった。
「おい空〜。反応薄いぞ〜」
なんていうか。前から、そんな感じは薄々気付いてたから。
2人はいつも一緒にいる。それに、たまに海さんへ見せる陸さんからの視線が、友人に対するものじゃないような、もっと特別なものみたいな感じがしていた。海さんも、同様に。
俺が2人に対して、前までと同じ態度で接しているのに気づいたのか、海さんは陸さんの惚気話を始めた。
小学校は一緒で、ずっと片思いしてたとか。
ハグすると良い匂いがするんだ〜とか。破廉恥なことまで。
それを聞いて、普段はポーカーフェイスな陸さんが顔を真っ赤にする。
「俺、お邪魔じゃないですか?」
冗談を言ってみる。ぶっちゃけほぼ本音だが。
「すまん」
すると、取り繕うように陸さんが謝ってきた。
海さんもそれに付け加えた。
「オレが陸と今の関係になれたのってほんの一年前なんだわ」
影のある顔を見せる彼。
こいう時、なんて返せばいいのだろうか。
「俺逆に尊敬しますよ。告白するって凄く勇気いるじゃないですか」
「それは…ど〜だろうね〜」
苦笑いを見せる陸さん。
何か隠してるように見える。
「あの、前から少し気になってたんですけど、海さんって宿人先輩に雰囲気少し似てますよね」
そう聞いてすぐ、俺はまずいことを聞いたと理解した。
空気が凍りついたように張っているのが身に染みて分かるから。
「…まーね」
海さんが何か思い出すように右上へ視線をやった。
そして思わぬ言葉を吐く。
「兄弟だからね」
…オレのマジの兄貴なんだよね。
「…マジ、ですか」
「今はもう絶遠してるんだけどね」
喧嘩だろうか。
いや。それよりももっと深い対立だというのが顔から見て取れた。
一体過去に何かあったんだ。
俺はそれに踏み込んでいいのだろうか。
宿人先輩のお別れ会については、話出せなかった。
今日は、海さんと陸さんの関係だけじゃなくて、海さんと宿人先輩が兄弟だということまで知って、俺自身変な気持ちだった。
これ以上は聞いていいものなのか。
今はただ、風呂に浸かってそれを考えていた。
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