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籠の外を夢見た花の話
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「柊さん、お客様です」
ぼーっと外を眺めていた柊に、透き通るような鶯の声が響いた。
窓の外は行き来する人達がそれぞれの人生を歩みながら思い思い言葉を交わし合い、すれ違って行く。
しばらく待っても返事がないので、鶯は控えめに少し襖を開けて中の様子を覗き込んだ。
寝ているわけでもない柊を見て、小さく溜息をつくと部屋に入り、耳元で再び声をかけた。
「柊さん、お客様です」
「うん」
最初から気付いていたようで、さして驚く様子もなく柊は返す。
あわよくば、驚いてくれないかなと、いたずら心を持って声をかけた鶯は、柊の、すべてお見通しとでもいうような反応に少しばつの悪そうな顔をした。
鶯は、腰まで伸ばした綺麗な髪を揺らしながら、柊が眺めていた景色を覗くように窓に目を向けた。
彼は、誰もが唸るような美貌の持ち主で、そのやわらかく控え目な物腰は、男たちをとても喜ばせる。
白い肌に、流れるような黒く長い髪。
そして、名前の所以でもあるその鈴の音のような美しい声。
柊は、しばらくしみじみと鶯を見つめた。
すると、こちらに目を向けた鶯と目が合った。
「気分でも悪いんですか?」
鶯が鳴く。
耳に心地よく響く声。
柊は首を横に振ってゆっくりと立ち上がる。
鶯は少し心配そうな顔で柊を見つめた。
少し、鶯の方が背が高い。
「大丈夫。俺はいつでも元気だよ」
心配そうな鶯を横目に、柊は笑って部屋を後にした。
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