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緊張
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記者はもうすでに集まっていた
あとは、俺が表舞台に出るだけ
背中を冷や汗が伝う
心配そうに見つめる岬に
「ちょっとだけ、力ちょうだい」
そう言って、唇を重ねた
「行ってきます」
笑顔でそう言った
ゆっくりと扉を開け、一斉にこちらを向く人々に足を止めそうになる
でも、止めることはしない
門扉側の塀の前まで移動する
「ひとつ、会見前に…家の外観は映さないでください。無断で映像を流した場合は、然るべき処置を取ります。一般の方の住居ですので、映さないと約束してください。お願いいたします」
丁寧に頭を下げた
それでも、何処かのテレビで放映されるのだろう…
今の所も編集されて…
「今の行為も、これから話す事も事務所の方で録画しています。その意味はお分かりですよね?」
「脅しですか?」
「いいえ、お願いです。正直に全てお話しします。ですから、面白おかしく編集されて流されるのは不本意ですので、事務所の意向で録画させていただきます。ご理解ください」
ざわざわと騒がしくなる現場
もうすでに外観は放映した所もあるようだ
「では、さっそく…今回の件については、偽りはありません。私の恋人は男性です。だからと言って、別れる事も考えておりません。仕事も、今の私でも良いと依頼もある事から、しばらくは続ける所存です。恋人についてですが、彼は一般人ですので取材等はお控えください」
「馴れ初めを聞かせてください」
「そうですね…最初は私の一方的な片思いでした。次第に彼も私に同じ思いを抱いてくれていると知り、私から告白しました。その後、諸事情により離れ離れで生活していましたが、今もこうして仲良くさせていただいていますよ」
「同性愛者という事ですよね」
「世間一般にはそう呼ばれます。まだまだ理解が得られていないのも知っています。偏見や差別がある事も…」
「別れるという選択肢は無かったのですか?」
「それは無かったですね。この世で一番愛してる人を手放すなんて…そんな事をするくらいなら、死ぬ方がマシだと思います。今の私には、彼が全てです。彼が居たから、今の私がある…」
「お相手の方にも親はいますよね?きちんと説明はされたのですか?」
「その事に関しては、コメントは控えさせてください。デリケートな問題なんで」
「恥ずかしくは無いんですか?」
「恥ずかしい…?そうは思いませんね。むしろ誇りに思います。彼を愛せた事、彼が私を愛してくれてる事。そこに男女の差は無いと思います。貴方なら、付き合った人を恥ずかしいと思いますか?心から信頼し合っている相手を、そんな風に思いますか?」
「仕事に支障が出る事もありますよね」
「それは、もちろん。考えていますよ。需要がなければ、去るだけです…後悔はありません」
「相手の方の事をもう少し詳しく」
「ですから、一般人ですとしかお伝え出来ません」
「そこをなんとか」
「無理なものは無理ですよ。そのうちちゃんと話せる時が来るかもしれませんが、今はそっとしておいてください」
「今回の記事について何かありますか」
「記事についてですか?申し訳ありませんが、その事に関してはお伝えする事は出来ません」
「何故でしょうか」
「弁護士の先生から、記事に関しては他言無用と言われておりますので」
「裁判という事ですか」
「まぁ、その方向で進むでしょうね…詳細は、その場で明らかになると思います」
「お相手の方に何か」
「ここで?それは、直接伝えますよ」
「そこをなんとか」
「そうですね…愛してますよ。その一言で十分でしょ?では、この辺で終わらせていただきますね。私の事を追いかけ回すのは構いませんが、犯罪に繋がるような行為はやめてくださいね…それと、この家に張り付いてもこれ以上は何も出てきませんので…おかえりください」
そう言い残しその場を後にした
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