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あふれる言葉とキスと
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誰も見てないテレビの音だけが響く。
缶は二つ目。
たわいもない話はもうなくなって
少し前から沈黙が続いている。
「あの、那谷さん」
「ん?何?」
沈黙を破ったのは俺からだ。
「あの、」
「おう。」
「いつから俺のこと…」
「あー、その話か。」
「あ、言いたくなければ、言わなくて大丈夫なんで…」
「大丈夫だよ、言える。」
ビールを机に置いて那谷さんはこっちを向く
「そうだな、怒るなよ?」
「…はい。」
「初めて見たときから顔が可愛いなって」
「顔…」
やっぱり顔…
「いや、でもな、それだけじゃなくて。顔に似合わずさらっと冷たいセリフ吐くところとか」
「あ、あれはその…」
「いや怒ってないから大丈夫」
そう言って笑う。
「ずっとみてたらさ。いいな、可愛いなって」
可愛いばっかりだな…那谷さん。
「そうですか…」
「おう。」
少しの沈黙の後、俺は伝えようと口をあける。
「あの、俺っ那谷さんのこと好きです!」
ビールをつかもうとした那谷さんの手が、動きが止まる。
那谷さんを見つめて
「那谷さんが好きです。」
伝える
「おう…」
那谷さんを見つめて続ける。
「那谷さんはかっこいいし、優しいし。その…那谷さんも気づくくらい那谷さんのこと好きで、それでえと…」
「冬弥」
「はいっ」
ちゅっ…
少しして、唇が離れる
「お前、付き合うまで冷たいセリフ吐くし扱いも雑にしてきたくせに…」
「すいませ…
ちゅっ
また塞がれる
「えっな、なた…ぅん…ちゅ、んっやだ那谷さ…んんあっんぅ…」
頭が痺れる。
しんが溶けるみたいに。
苦しくて胸を押す。少ししてやっと唇が離れる。
「お前、急にそんなに好き好き態度に出すな…俺が持たねぇ…」
いつもとは違う那谷さんの目が俺を見つめる。
近づく那谷さんの顔。
「あの、那谷さんっ…」
「なんだ。」
那谷さんの顔がすぐそこにある。
「那谷さん…好きです。」
那谷さんは…?
那谷さんを見つめてみる。
「…おう。」
返事だけだ。
『那谷さんもちゃんと俺のこと好きですか?』
こう言わなきゃ言ってくれないのかな…
好きって言ってほしい。
だから好きって『言わせた』くない。
どうしたら那谷さんから好きって言ってくれる…?
『那谷さんもちゃんと俺のこと好きですか?』
聞いちゃダメだ。
でも…
考えはまとまらない。
…とにかく今はこの距離を。
「那谷さん、キスするんですか?」
「そうだな」
「あの、那谷さんキス長すぎです…」
「悪い。」
少し笑って那谷さんは小さいキスをした。
そして
「圭吾だろ?」と耳元で囁く。
キスをする。長いキス。
苦しくて仕方なくて
でも気持ちよくて。
「ん…むっ…ぁっ…やんん…」
唇が離れる
ぷはっと俺は息を吸おうとする
「涙目になってるよ」といたずらに笑う那谷さんは
「冬弥?」と名前を呼んだ。
にやにやしている
「なんですか?」
「冬弥、」
「だからっ…」
「冬弥。」まっすぐな力強い声で呼ばれた。
「冬弥は呼んでくれないのか?」
「…そ、そんなの」
「冬弥」
「冬弥…?」
まっすぐ見つめる。
「圭吾…さん」
「ん。」
満足そうに笑った那谷さんは小さいキスを俺にした。
その日帰るまで何度も何度も那谷さんは俺に小さなキス、長いキス…口だけじゃなく頬にも。
おかげで帰り道はキスされた場所が熱い気がして
なんでか下を向いて帰った。
那谷さんはキス魔なのかな。
那谷さんのキスは苦しいけど優しい。
「そうだ、俺那谷さんに好きって何度も…」
恥ずかしい。あんなに…
好きって言ったのは恥ずかしかった。
でも言えてスッキリした。
「那谷さん、好きって言ってくれるかな…」
那谷さんの口から好きって聞きたい。
もっと好きって伝えたい
好きって聞きたい。
こんなに感情を表に出されてぶつかられた事も初めてだし、あんなに気持ち伝えたいって思ったのも初めてだ。
「那谷さんが好き。ほんとに好き。」
頭を好きが回り続ける
この夜の中を那谷さんで埋めて。那谷さんへの気持ちで埋めて
全てがきらめくような
そんな気がして。
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