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シュートと1年
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バスケットボールを使ってのパス練習。
残念ながら2人1組のままだ。
リズミカルにボールが行き来するのが普通のパス練習なのだが、僕らのは違っていた。
というか、パス練習なんかするつもりがさらさらないからなんだけど。
顔面に…当たれ!!
そう強く念じながら投げたボールは綺麗に奴の顔面に飛んでいく。
「泪はバスケ苦手なのかな?」
しかし、呪いのボールはそのまま綺麗にキャッチされ、綺麗に僕の手元に返ってくるから余計腹立つ。
顔面は取りやすいからいけないんだ。
じゃあ次は…股間だ。
潰れて、転げ回れ!!
パスと言うには余りにひどいボールを投げたのにも関わらず、奴はパシッとキャッチして若干のドヤ顔を向ける。
その目が“馬鹿じゃねーの?”って……
次は当てる...絶対に…
「パス練終了。次はシュート練な」
ぬわっ!?このタイミングで…酷すぎる!
僕の願いも虚しく、生徒達はそれぞれバスケットゴールに向かってシュートを打ち始める。
僕も渋々シュート練のために歩き始める。やる気0だけど。
シュート練とかやったところで入らないし。そもそも身長的に厳しいわ。
僕は可愛くコート内の選手(主に勇くん)を応援する係なのに…。
「はぁ…」
「ボールやる」
重い足取りでボールを取りに行こうとした僕に、奴は持っていたボールを半ば押し付けられるように渡してきた。
突然の行動にあんぐりと口を開けてしまった。
まさか、こんな地味な優しさを…
「先にやってろ。下手なんだから」
僕の頭を一撫でして、去っていったアイツ…。
前言撤回だ!余計なお世話だっての!今のがなかったら優しさを認めてやろうと思ったのに…クソ野郎。
こうなったら下手なんて言わせねぇ。ギャフンと言わせてやる!
キィーっとボールをゴールに放り投げるが、ボードに当たって、変なところに飛んでいく。
ハートに火がついた僕はそれぐらいでめげたりしないもんね。
こうして黙々とシュート練を開始したのだが。
──ゴンッ…ボンッ…ドカッ…スカッ…
5分後。
全く入らないんですけど…。何で?
入らな過ぎて震える、まじで。
近い所からシュートしても、遠いい所からシュートしても、レイアップシュートをしてもことごとくリングに当たり跳ね返されるか、ボードに当たって跳ね返されるか、そもそも届かないかのどれかになってしまう。
僕ってここまでバスケ下手だったっけ?
え?本当に下手?もう下手?
認めざるおえない状況に、頭が混乱する。
今までサボっていたツケがこんな所に回ってくるとは…不覚だった…。
ショックで頭を垂れている僕の元に、一つのボールが転がって来た。
はぁ。
そのボールを拾い上げ、持ち主を探す。
スルーしなかったのは、周りの目があるから。本来ならガン無視だ。
「あ!すみません!ありがとうございます」
「ううん、全然だよ」
隣のゴールから軽快に走ってきたのは、さっきの顔を赤くした1年。
…勇くんじゃなかった。
彼にボールを渡し、それで終わりかと思いきや、その場に立ち止まり僕の事をじっと見つめてくる。
「ん?どうかしたの?」
「あっいやっその…先輩1人で練習してるんですか?」
あーそう言えば、クソモデルが戻って来てないな。
ボールを取りに行って…。
ボール籠の方に視線を向けると、そこにクソモデルの姿があった。
そしてその周りに群がる可愛い系男子達。特に1年。さっき僕に敵対してた輩もいるし。
キャッキャと笑いながら話す男子達に合わせて笑いながらサボってやがる。
ふん。別にいない方がいい。いたら確実に馬鹿にされるし。
なんかイラって来たのはアイツの顔を見たせいだ。存在がイラつく。ばーか。
「うん。1人で練習してるんだけど…なかなか入らなくって」
さっさと奴から目を離し目の前に居る1年くんに視線を向ける。
この1年くん、運動出来そうだしシュート教えてもらおう。
上目遣いに眉を下げ見つめると、またポッと赤くなりちょっとアタフタなっているところが可愛い。
「あの!よかったら一緒にやりませんか?俺、一応バスケ部なので」
「わぁ!本当に!嬉しい、ありがとう」
パッと笑顔で彼の左手に触れる。
「こ、そ、こちらこそ、嬉しいです!」
はは。カチコチになって面白ーい。
そうだよ!これが普通の反応なんだよ!
理想通りの反応になんだか嬉しくなる。
笑顔のまま彼の手を引き、ゴール近くまで歩いて行く。
「えと、ではまずシュートを打ってみてください」
真っ赤な彼に言われるままシュートするも勿論入らない。
「入らない…」
ションボリした(演技だけどね)僕に1年くんは「だ、大丈夫ですよ!」なんて励ましてくれた。
「その…えーと、まず、ゴールを直接狙うんじゃなくて、ボードの黒い枠内に当ててゴールに落とす方がいいかもしれません」
あーそんなこと言われた記憶があるな。確かにあの枠の存在意味がそれしかないよな。
「なるほどーそうなんだ!」
「はい。あとは、もう少し…こう腕を上に上げてですね…」
「こんな感じ?」
「ぁ…いえ、もう少し…」
ボールを持ち構えた僕。腕を上げろと言われたから、上げたけど、違ったみたいだ。
1年くんは恐る恐る僕の腕に触れ、定位置まで動かしてくれる。
「そのまま足の曲げ伸ばしも使って打ってみてください」
1年くんがお手本として打ったボールはボードに当たりゴールに吸い込まれた。
ほほー。さっすがバスケ部。
よし、やるぞ!
よく狙って…黒い枠…
せーの!
言われた通り、見た通りにシュートすると、僕の放ったボールもボードに当たりリングに弾かれそうになりながらもなんとかゴールに入ってくれた。
やった!入った!
「すごいすごい!入ったよ!」
感動の眼差しを向けると、照れた様に1年くんは頭を掻いた。
「いえ…泪先輩のセンスがいいからですよ」
ふふん!いい事言うね、君!
これならバンバン入るかもしれない。
「えへへ、ありがとう!バスケ出来るなんてかっこいいね」
「そ、そんなこと無いです…」
「えーかっこいいよ!憧れちゃうなぁ」
彼に止めを刺し、これで彼は僕にメロメロになりました。
味方は多い方がいいからね。
1年生にも作っておいて損はないはず。
次はもう少し離れた位置からのシュートを教えてもらおうとした所、なんか後ろのゴールが騒がしい。
「キャーー!かっこいいー!」
男子校とは思えない黄色い声に耳を疑う。
どっから声出してるんだよ。僕でさえそんな声出さないのに。
「げ…」
なんとなく予想はしてたけど、見たら見たでムカつく。
後ろのゴールではエセ爽やか野郎が華麗にスリーポイントを決めていた。
決めた瞬間回りに笑顔を振りまき、歓声を上げる連中に「ありがとう」なーんて言うから益々うるさくなる。
外せよぉ!何でバスケ出来んだよ!
「遥海先輩って本当にすごい人ですね」
「…でも君も負けてないよ!」
あいつを見て素直にそう零す1年くんの両手をぎゅっと握りしめた。
あんな奴に負けんなバスケ部!キャーキャー騒がれて喜んでる奴に!
1年くんは茹でたこみたいに赤くなり、そんな様子に笑ってしまった。
僕達の様子をゴールから見て舌打ちしていたアイツのことなんかこれっぽっちも知らなかった。
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