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勝手に部屋が変わっている件について
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うっすらと明かりが差し込んでいるのが分かる。
身動きが取れないのに、温(ぬく)くていい香りがする。
朝…?
ボケっとした頭で目を開け、そして飛び込んできた光景に僕は今世紀最大の飛び跳ねを披露した。
「ぎゃああああ!!」
どんな寝起きドッキリよりも恐ろしい状態に、なりふり構わず足でベットからソレを蹴落とした。
ひぃぃぃ!
「うるせぇ…いきなり蹴り落とすな」
ベットから落とされたソイツは僕の事を睨んでくるが、こっちはそれどころじゃない。
何故っ!?
「何でお前がっ!?は!?」
何で僕はクソモデルと同じシングルベッドでくっつきながら朝を迎えたんだ!?
こんなのゴキブリと朝を迎えるのより最悪だ!!
「意味分かんない、無理、理解不能。私は誰ここはどこ」
今起こっていた事を受け入れたくなくて、パニックに陥った僕は布団を頭から被った。
「思い出したのか?」
その布団を無慈悲にクソモデルは剥ぎ取り、僕の顔を覗き込む。
見るな寄るな!!
僕は昨日の自分を呪いたい…。
「何で昨日記憶飛んでたの!?ありえない…こいつを先輩とか呼んでた…」
「実際先輩なんだけど」
「うるせー!知るかそんなこと!つか!ここ敦の部屋なのにどうして…」
そこまで口にして、昨日感じた違和感が現実となる。
そこに広がっていた風景は、敦の部屋とはかけ離れていたからだ。
全体的にはモノトーンで纏められて、物も少なく整理整頓されている部屋…。
そして、敦とは異なる匂い。
部屋を見渡し、奴に視線を戻すと、腕組みをして見下ろしていた。
「俺の部屋で俺が寝てて何か問題ある?」
「お前の…部屋?」
手に変な汗が滲んでくる。
僕は急いでクソザルの部屋を飛び出し隣の部屋に入った。
そこに広がる光景にまた愕然とした。
「何でお前の部屋の隣が僕の部屋になってんの…?」
机の上の教科書の位置も、本の並びも、小物の角度も何もかも寸分違わぬ僕の部屋がそこにはあった。
あるはずの無い部屋が、ここにある…。
あー分かった。
「…これは悪い夢か」
「現実だ馬鹿」
僕はそっと部屋を出て戸を閉める。
後ろから変な声が聞こえたけど、夢なんだから。夢の中ですらクソモデルはいけ好かない野郎だったぜ。
「おい。認めろ」
「覚めろ覚めろ覚めろ覚めろ」
すべての音をシャットアウトするため、耳を手で覆い、目を瞑ってひたすらに唱える。
これは夢、悪夢、クソモデルの呪い。
覚めろ覚めろ覚めろ覚め
「諦めろ」
「ッ……!?」
身体が後ろに引っ張られ、傾いた僕は呆気なく奴の胸の中に捕まった。
そして唇に柔らかく暖かいものがチュッ…と触れ、離れていく。
あまりにもスムーズな動きに僕の脳が付いていけてない。
ただその感触が3度目だと理解して、僕を捉えるクソモデルの真っ直ぐな視線を感じて、これは現実なんだって認めざるおえなくなった。
「目は覚めたか?それとも足りない?」
「…調子のんなクズっ!!!」
お前はまたキスをッ……クソッ!!
逃げ出そうと藻掻くが、奴の腕が僕に絡み付いて離れない。
無駄に力強いんだよ!
「ふんぬぅぅ!!」
「はいはい無駄無駄」
「なめんな!!」
「ッたく…。逃げられると思ってんのかよ…」
奴はまだ余裕を持て余しているようで、呆れている。
「くっ...あーもー...頭痛くなってきただろ!」
無駄に力が強いバカモデルのせいで力を使わされた僕は、急に頭がクラクラしてきた。
「悪い、大丈夫か?」
「心配するなら離せよ」
「今離したらぶっ倒れそうだし。ほら、ソファーに座れ」
僕の腰に手を回したままソファーに連れていかれ、座らされた。
「たくっ...朝から最悪。誰かさんのせいで」
「謝っただろ。今日は休みだからゆっくり休んでろ」
「休み?平日だぞ?」
「先生の許可済み、というかドクターストップ」
ドクターストップって…そこまで重症じゃないのに。
寧ろこの部屋でコイツと過ごしている方が悪化しそうだ。
「お前は学校行けよ」
「お前の看病担当ですから行きません」
「は?ずっと部屋にいるのかよ…つか、ちゃんと説明してもらってなかった」
「何を?」
「部屋のことに決まってるだろ!どーなってるんだよ!」
少し声を張っただけなのに頭に響いた。イタタタタ。
「説明ねぇ。ただ俺が二人部屋に一人で住んでたからお前を移した。同居した方がいろいろ楽だろ?」
飄々と、さも当然とでも言うかのような物言い。
この感覚はなんだろうか。
怒りを通り越して、呆れと諦めが支配して…目が回ってくる…。
「………普通部屋を移動するのに本人のサインとか必要なんですけど?」
「そんなの簡単。お前の同室者に協力してもらったらスムーズに事が進んだ。お前の字とそっくりにサインしてくれたし、物の移動もやってくれたし…」
その後の事は聞いていなかった。右耳から入ってそのまま左耳から抜けた感じ。
とりあえず分かったことは、敦に裏切られたってことぐらいだ。
あいつの事だ。クソモデルに餌で釣られたに決まってる。
一生恨んでやるからな!敦!!
──その頃の敦は…
「くしゅん!…風邪ひいたかな」
急に寒気がしてくしゃみをひとつ。
今日は早寝しよう。
そう考えていたのだった。
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