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土曜日のお誘い
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ネットで調べた『相手を呪ってインフルエンザにかからせる方法』も『相手を呪って金縛りにする方法』も『相手を呪って激太りさせる方法』もことごとく失敗して、本日待ちに待っていない土曜日。
いつもなら8時頃まで眠っているのに、今日に限って6時から目が覚めてしまった。布団の上でゴロゴロしていても、眠ることが出来ず、僕はリビングに足を運ぶ。
もちろんアイツもまだ起きていない時間帯。
することも無い。だけど、何かしていないと落ち着かない。
…落ち着かないんじゃない。何かしていないと勇くんの部屋に突撃するか柚瑠の部屋に邪魔しに行くかしてしまいそうだった。
僕は自然とキッチンに入り、冷蔵庫をあさっていた。
朝食を作ろう。
アイツと交代で作る朝食。今日の当番はアイツ。
…まぁでも、これだけ時間があるなら作ってやらないこともない。
あっ、と驚く凄いの作ってやる。
同じ部屋になってわかったけど、アイツは綺麗好きで料理も美味い…嫌味な男だ。コイツと結婚した女はきっと苦労するだろう。モテるし何でもできるし、1人2役で一生を過ごしても何ら不自由なく、平然と笑っていそうだ。
オマケにモデルっていう職もある。本気出して芸能界にでも入ったら、なんやかんや上手く立ち回って『今話題の若手モデル』とかなりそう。もしかしたら、俳優デビューとかしてるかも。
はーん。ま、腹黒野郎にはピッタリだな。
そんな事を考えながら、卵を2つ割って黄色い玉に箸を突き立てた。ぶちゅ、と弾けたそれをグルグル掻き混ぜて均等に混ざるよう頑張る。それに砂糖を入れてまた混ぜた。
温めておいた玉子焼き用の四角いフライパンに流し込み、その間に味噌汁に使う豆腐をまな板の上に出し、わかめを用意した。
完全に固まる前にクルクルと巻いて玉子焼きの完成。この半熟感がたまらないのだ。
味噌汁は出汁をとるのがめんどくさいから、『本場カツオの出汁!』なるものを使う。後は豆腐とワカメを入れて味噌を溶かして良しとする。
メインは…鮭?納豆?ふりかけ?
まぁこの中だったら鮭か。冷凍の切り身で焼くだけだけど。
なんだか、いつもの朝食と変わらない気がする。いや、変わらないわ。
でも、朝食ってこれ以上アレンジする必要ある?朝から焼肉とか無理だし。
悩みながらキッチンにあるものを思い浮かべる。
あー!いいこと思い付いた!
僕はガサゴソとキッチンの下の棚を漁り、奥の方にあったものを取り出す。
それはミキサーである。
朝と言えばスムージー。だけど、スムージー用のミキサーも無ければ材料を凍らせてもない。
つまりは簡単に出来るミックスジュースでも作ろうということだ。
ここでアイツの嫌いな食べ物の一つや二つ入れたかったけど、生憎知らない。嫌いなものを知らないし、好きなものも知らない。
そして出た結論は、
…適当に混ぜまくろう。
ドリンクバーでコーラやメロンソーダやコーヒーを混ぜて友達に飲ませるっていう罰ゲームをやったことがある。
…言葉のあやがあったわ。罰ゲームじゃなくて、今僕が作ろうとしているものはサービス品だ。
冷蔵庫にあった混ぜたら不味そうなものをかき集め並べた。
それでも、少し物足りない気がする。
「シソとか、セロリとか、ゴーヤとか家にあったら良かったのに…あと、センブリ茶とか。買ってこようかなぁ…ククク」
手元の野菜をミキサーに放り込みながら、笑いがこみ上げる。
美味しそうなジュースが出来そうだなぁ…なーんて!
「おいコラ」
「びゃぁ!?」
花歌を歌い出そうとした僕の真後ろから低く掠れた予想だにしない声が降りかかり、小さく飛び上がってしまった。
恐る恐る振り返ればジロりと僕を見下ろすアイツが、寝起き不機嫌を全面に押し出して仁王立ちしていた。
「お、おはようございます」
「……何してたんだ?」
「朝食を作ってたんだよ?」
イタズラをする前にバレてしまった子供は自分の可愛さを使って切り抜ける。という訳で、僕も小首をかしげて上目遣いで見つめてみた。そして瞼を瞬かせ唇をちょっと尖らせ、追い打ちをかける。
しかし…
「へぇそれはご苦労様。でもミキサーの前にこんだけ変なもん並べといて、さらにセロりだのゴーヤだのをどうするつもりだったんだ?ん?」
効果0。頭に右手が乗せられた。頭を撫でてくるのかと思いきや、グッと指先に力が入れられて頭皮に刺さってくる。
「いやぁ……栄養あるかなって…ね?」
「…真面目に作れよ?」
最後にググッと力が入り鷲掴みされ僕は
「はい。」
この言葉以外選択枠がなくなった。
テーブルに並んだ朝食を二人で食べる。
変なことをせず普通に作ったから大丈夫だと思うけど…。
チラッと奴の顔色を窺う。
「ん?」
「っいえ!何でもないです…」
「美味いよ…今のところは」
黒い笑みを浮かべ、ミックスジュースを飲み干した。
結局ジュースにはリンゴとミカンしか入れなかった。ただの生絞りジュースだ。別にジュースにせず原型のまま出しても同じだった気がする。
「なぁ、今日暇なんだろ」
玉子焼きにかじりついていた僕に不意打ちの問いかけ。
一瞬迷って
「……忙しい」
そう答えた。
けれど、アイツから返ってきたのは
「ちょっと付き合えよ」
という、理不尽なものだった。
いやいやいや…人の話聞けよ。
「忙しいって言ったんですけど」
「いいから」
おい!いいからってなんだよ!忙しいって言ってる人を無理矢理連れ出す気か!
た、確かに、予定なんて何もないけど…でも、ほら、探せば色々やることあるし?
「晩飯、奢ってやるから」
「チッ…しょうがない」
一番高いメニュー注文してやる。
晩飯に誘われて、奴の話に乗ってしまったことを激しく後悔したのは言うまでもない…。
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