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撮影現場のブス達
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撮影現場に入った途端向けられる視線。その視線の先にいるのは僕ではなく、アイツと美紗希さん。
口々挨拶をする関係者達。アイツと美紗希さんもにこやかに返す。どうやら美紗希さんはここの人達と知り合いみたいだ。前にモデルをやっていたのかもしれない。
堂々としている2人の後で縮こまって挙動不審の僕は、俯き加減で歩みを進める。
けれど僕の耳に嫌な猫なで声が入り、ぞっと寒気が走り抜けた。
「遥海くぅん!久しぶりだね!」
「遥海さん!私とツーショット撮りましょ!」
「私が今日の撮影のカップル役やりたぁい!」
そして気がついた時には奴の行く手はここのモデルと思われる女共に塞がれていた。美紗希さんや僕のことは眼中に無い模様。
ひぃぃぃ!邪魔!
自分と同じ匂いしかしない女共。腹黒だ、絶対。
「みんな、今日はよろしくね」
そんな奴らを慣れた手つきであしらい、アイツはニコっと爽やかフェイスで微笑んだ。
女共3人がうっとりとした所で、アイツはわざとらしく「あ!」と声を上げた。
「今日、前川さんの代わりの子連れてきたんだ」
「っ!?」
おまっ!馬鹿!このタイミングで!?
あえて僕のことを無視していた女共の前に引っ張り出されてしまった。
アイツがいる前で露骨に嫌な態度は取らないけど、瞳が鋭くなり僕のことを品定めするような不躾な視線だ。
『何お前?』『は?キモいんですけど』
などと、心の声が聞こえてきそうだ。
うわぁ…。
こんな所から逃げ出したい気持ちももちろんある。だけど、それよりコイツらに負けたくないと本気で思った。
僕は男。でも今は女の子。コイツらよりも可憐で可愛らしい女の子だ。
「ぁ…ルミって言います。遥海先輩に誘われて来たんですけど、モデルだなんて…皆さんみたいに可愛いくないですけど、足を引っ張らないように頑張ります。よろしくおねがいします」
か弱い女の子を演じて、上目遣いで右から金髪ブス、厚塗りブス、色黒ブスに微笑みを返した。
まぁ、喧嘩売ってんのは向こうも理解したんだろう曖昧な笑みを浮かべている。
「えールミちゃん可愛いよぉ!でもモデル初めてなんでしょぉ?気をつけてね?」
「色々大変なこともあるからね?」
おうおうその言葉の裏にどんな意味があるんだ?何か仕掛てくるとか?
ふっ、甘いな。お前らに勝ち目なんかないよばーか。
こっちにはお前らの弱点があるんだからな。
「ご心配ありがとうございます。でも大丈夫です。遥海先輩に教えてもらうので…」
不本意だか、利用しないわけにいかないだろ。
僕は隣にいた奴の袖を掴み、恥ずかしそうに俯いて見せる。
アイツも何を思ったのか、袖を掴まれていない方の手で僕の頭をポンポンと撫でた。
「あぁ。俺がしっかりサポートするから安心してね?ルミ」
その一言が僕とブス女達とのゴングになった。
美紗希さんが手配させた控え室に3人。
「お前も派手に喧嘩売ったよなぁ…」
「それに乗って来たんだから、お前も同罪だ」
「んふふ。でもあの子達に勝ち目なんかないわよ。泪くん…じゃなくてルミちゃんには私もついてるんだしね!」
美紗希さんは楽しそうに鼻歌まで歌っている。
アイツも
「そろそろ、あの女達ウザかったから丁度いいかと思った」
とか本音を零す。
確かに、あんなのに毎回付き纏われたらうんざりするよな。同情するわ。
「最近撮影も面倒くさくなってきたし、受験生だし、断ってたんだけど、今日どうしてもって言われてさ」
アイツは撮影用の服に着替えながら愚痴っている。その顔は王子様の面影すらない。
「服は向こう持ちって話だったから、金はかからないし、女のメインの1人が急に来れなくなって困ってるって話聞いて、OKしたわけ」
「そこで僕に女装させて連れてこようと思う思考回路が残念過ぎる」
さっき、この部屋に来る前雑誌の関係者のところに連れて行かれ奴が僕のことを紹介した。その人は僕を見てとても嬉しそうに挨拶をしてくれた。多分彼の予想以上だったのだろう。
それが男だって知ったら……。考えるのはやめておこう。絶対バレない自信はある。
今回の雑誌は『couple』という名前のもので、名前通りカップル向けの雑誌だ。だけど、カップルだけではなく、彼氏が欲しい、彼女が欲しいと言った若い世代の子もターゲットにしているので、女子ウケのする服や、男子受けのする服だったり、恋愛テクニックが豊富に乗っていたりする。
僕も立ち読みしたことあるぐらい人気だ。
その雑誌にまさか自分が女の子として載ることになるとは流石に予想はできなかったけどね。
モデルが初めてということもあって、ソロの写真はほとんど撮らず、カップル写真や女子数人で撮るものメインとなった。
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