アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
撮影
-
撮影が始まり、まだ出番じゃない僕は美紗希さんと一緒に見学していた。
あの女達が撮影されている。認めなくないけど、モデルをやってる事だけはある。自分が可愛く見える角度、可愛く見せられるポーズに表情。カメラマンの要望にも難なく答えてみせる。
あんな風に出来るだろうか。
やっぱり、カメラで撮られると思うと緊張する。
「ルミちゃん!大丈夫よ!自信もって」
「でも……」
「大丈夫。最初は遥海との写真だから。彼に全部委ねれば成功間違いなしよ」
そう笑いかけられても、手放しで喜べませんよ!!
アイツに全部委ねたらそれはそれで負けた気がする!!
「じゃあ次!ルミちゃんと遥海くんよろしく!」
「頑張ってね!」
カメラマンの人に呼ばれ、美紗希さんにトンと背中を押された。
撮影を終えた女達が、僕の緊張した顔を見てクスクス嫌な笑いを浮かべている。
その嫌味でさえ今の僕にはプレッシャーとしてのしかかる。
カメラに立ってライトと周りの視線を一身に受け、益々カチコチに固まって思うように笑えない。
証明写真じゃないんだから。ましてや女の子なんだから、可愛く笑わないといけないのに、無理に上げた口角と見開いた瞳がミスマッチ過ぎてカメラマンも困り顔。
しかも、どういうポーズを取ればいいのか分からないし、求められたポーズも上手く取れない。
隣のアイツは、余裕そうにやってのけるのに。
これじゃあ、あの女達と勝負にもならない。足を引っ張りまくっている。
クスクス笑う声が大きくなり、あの女達は小声で話しては僕のことを馬鹿にしたように見つめる。
美紗希さんも眉を下げ、可愛らしい口が半開きになるほど心配そうにしていた。
こ、このままじゃダメだ…。
関係者らしき人達も何か話し合いを始めている。
僕が使い物にならないから別の人と交代…?アイツらと交代させられる…?
情なくて涙が出そうだ。でもここで泣いたらもっと情けない。
きゅっと引き締めた唇。強ばった頬。俯く顔。
泣くな…落ち着け…。
気持ちを静めるのことに精一杯で、もはやカメラをも見ていない僕の視界に突如大きな手が現れた。
その手は僕の頬に伸びてきて、ムニュっと軽く摘みフニフニしてくる。
「な…ふ」
「緊張してんの?」
頭の上から落ちてきた声に目線だけ寄越した。普段からじゃ考えられないくらい優しげな顔に、驚いて、でも目が離せなくなった。
「し、してない…」
ちょっと湿っぽくなった声。本心では縋り付きたい。こんな撮影もう無理って。僕はモデルなんか出来ないって。
そんな気持ちを込めて、僕の頬にあった手を握る。
目の前にいるのは腹黒野郎のはずなのに
「…大丈夫。特に意識しなくていい。俺に任せろ」
今だけは──
「泪…俺の声だけ聞いて」
「……うん」
小さく頷いた僕に笑いかけてから、斎之内はそっと僕の腰を抱いた。そして、かなり近い位置まで僕を引き寄せるとカメラ側の右耳に髪をかけた。ゆっくりとしたその動作、耳を掠めた指が擽ったい。
「少し俯いて…そう。そのまま俺の胸に手をついて」
斎之内の僕にしか聞き取れない声で、囁く。なんだか、耳に残って甘い…。
言われるがままに斎之内の胸に両手を付いた。服の上から触れた胸板が予想以上に逞しい。
胸筋…。
少し俯いてと言われたから、僕の目線は触れている胸筋に注がれている。
でも、その後の指示が来ないからどうすればいいのか不安が募って来た。
うう…顔上げていいのかな…
い、一瞬だけ。ちょっと様子を伺う程度──
そう思って顔をあげようとした瞬間、僕の顎に斎之内の左手が添えられた。
「ぇ…?」
クイッとそのまま掬われて、斎之内の整った顔が気が付いたら目の前まで迫っていた。ビックリして、後ろに下がろうとしたけど、腰に回っている手がそれを許さない。
「ぁ…ぉ…」
「泪」
本当に綺麗な顔をしている。
いつもと違う、意地悪じゃない。でも仮面を被ってるのとも違う。
…ずるい。そんな顔で…迫られたら。
誰だって見惚れてしまう。
そのまま斎之内の顔が下りてきて、僕はそのまま瞳を閉じ…
「はい、おっけー!2人ともありがとう!」
かけた所で、カメラマンに救われた。
「もう少しでキスできたのに残念」
「………fuck!!」
離れる直前耳元で囁かれ、カッと顔に血が上った。
完全にアイツの雰囲気に呑まれていた自分が恥ずかしい。
あーバカバカ!!自分のバカぁ!
僕は顔を隠すように俯いて美紗希さんに駆け寄った。アイツは次すぐに撮影があるようで着替えに向かったようだ。
「ルミちゃん!よかったわよ!なんかエロスが滲み出てたわぁ~むふふ」
「美紗希さん……はぁ」
「なぁに?溜息なんかついちゃって~!言った通り遥海に任せれば良かったでしょ?」
美紗希さんはニコニコしながら、僕の頭を撫でてくる。さながら、ペットを褒めている飼い主のようだ。
…僕はペットじゃないのに。
それでも美紗希さんに弱い僕は彼女の気が済むまで大人しくしていた。
自分の力で上手く出来たなら、さっきの女達の所に行ってドヤってやるつもりだったけど、そんなことできる立場でもない。
全部アイツのおかげ…。
なんだか物凄く悔しくて、女達の方もアイツが撮られているところも見ずに、椅子に座っていた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
31 / 123