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その日からの景色
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*********
いつも見ていた風景が、その日を境に変わってしまったようだ。
僕が今までいた世界は勇くんを中心に回っていた。
その核を失ってふと、周りを見回したら僕は1人椅子に座っていた。
浅く広い友人関係はなんの意味も持たず。突然変化した僕の態度にみな遠巻きに噂する。
『勇と柚瑠が付き合ってから変わったよな』って。
『もしかして、泪は勇のこと好きだったんじゃないか』って。
その他大勢の知らないやつにまで勘づかれるほど、態度に出ていたかな。
いつもみたいにみんなに笑いかければいいだけなのに、笑いたくない。話したくない。
もはや演じる意味がみいだせない。演じることに疲れてしまった。
そして周りからの僕を見る視線が嫌で、みんながみんな好奇心や悪意で近寄ってくる奴らに見えて、誰とも話さなくなった。
…アイツ以外とは。
「帰ろ」
「なんで…いるの?」
「さぁ。たまたま?」
HRが終わった瞬間に教室を抜けてきたのに、玄関の柱に背を預けて立っていたアイツ。
僕のことを見つけると変わらない意地の悪い笑みを浮かべる。
毎日、遅く行っても早く行っても待っているのだから、これは一種のストーカーなんじゃないの?って思ってるけど、結局一緒に帰ってしまう。
特別話すことはないけど。
教室よりは居心地がいい。
あーでも…
でも、やっぱり胸に後ろめたさが刺さっているんだ。
早く答えを出さなくちゃいけない。
yesかnoか。
気持ちの整理というやつは、出来たと…思っている。
案外簡単に勇くんへの想いは断ち切れた…かもしれない。まだちょっとは残ってるけど…これ以上無理に追おうとは思わない。
友達だって、別にいなくても生きていけるし。全てをシカトしていればその内関わりもなくなるだろう。
勇くんも…柚瑠も。
全部過去に変わる。
だけど…整理しても整理しきれないことが1つ。僕が一番悩んでいること。…アイツ…遥海のこと。
僕が遥海に抱いている感情は…。
告白の答えをアイツは全然急かして来ないし、態度もそんな変わってない。
それに比べて僕は…。
「泪?どうかしたか??」
「ぃっ…や…別に…ちょっと…ね」
「ふーん。まっいいよ。今日何食べたい?」
「ん…何でもいい」
「じゃあ野菜炒めでも作るかなー」
アイツが急に話しかけてきたらうまく反応出来ないし、近づいてきたり触ってきたらビックリして逃げちゃうし、まともに顔も見れない。結局素っ気ない態度しか取れない。
それでもアイツは嫌な顔しないで何も言ってこない。
ただ…笑って流してくれる。
その笑顔を見る度、胸が痛んで苦しくなる。
僕のために、僕を甘やかしてくれる。
このままじゃいけないのに…分かってるのに…。
僕は何を怖がっているんだ。
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