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おかゆ
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布団の中に鼻までしまって、プイっと壁側に反転した。
遥海の手にあったおかゆから漂う臭いも食欲がわかず体調不良の僕にとっては少し不愉快に感じる。
「それ、いらない」
「こら。食べろ」
「食べたら吐く」
「吐かない程度に食べろ」
「やだむり」
子供のように拒否する僕を見て、遥海は多分苦笑いを浮かべてため息をついた。
「るーいー。頼むから」
ツンツンと僕の背中を布団の上からつついて、僕が無反応でいると頬をつついてきて、嫌がるとつついた所を優しい手つきで撫でられた。
「早く治すために、食べて」
「………起き上がれない」
「いいから食え」とか「俺に従え」とか「食わないとお仕置きする」とか、俺様的なことは言わず、僕を労って心配して看病してくれている遥海に、少し…ほんの少しだけ絆されてチラっと横目で僕の顔を覗き込んでいた遥海を見詰めた。
もちろん風邪の元凶は遥海で、悪いのは遥海だから許してはないけど、やっぱり優しく触れられると無反応ではいられなかった。
「暴れるなよ」
「ん。」
「いい子」
遥海は1度おかゆをベットサイドに置いて、僕を軽々起き上がらせるとベットに入り込み僕の背中側に座った。
そして、力の入らない僕はそのまま遥海の胸に倒れ込み支えてもらう。
「熱いな…」
遥海の大きな掌が額に当てられ、次に首に触れられてほぅっと熱い息を吐く。
無意識の内に遥海の首筋に顔を埋めクンクン匂いを吸い込んでいた。
「ちょ……泪くーん。そんなことされると色々まずいかもしれないんだけど」
「…知らね」
「はぁ…俺の理性に感謝しろよ」
「病人に向かって変なこと考えてんじゃねぇよ。バカ」
遥海は不服そうに唇を尖らせ、僕の唇を奪ってからぎゅっと強く抱き締めてきた。
「これで我慢しとく」
首筋を強く吸われピリッとした痛みを残し、遥海は顔を上げておかゆを手に取る。
………っ!?
急なことに驚いたけど、すぐさま熱い身体がさらに熱くなった気がした。
ね、熱が上がっただけだ!絶対に!!バカ!!
「はい、口開けて」
「………」
レンゲで掬ったおかゆが僕の口元に運ばれてくる。卵の入った卵粥。
食欲はない、食べたくない。
けど…僕のために作られたこれを食べないのも勿体ない気がして…。
小さく口を開けて、おかゆを誘い込んだ。
優しい味に胸がほっこりして、飲み込んでからもう1度口を開けた。
「ちょっと癖になりそう」
「?」
「なーんか、餌付け的な?」
僕の開いた口におかゆを運びながら遥海がそんなことを言っていたけど、無視しよう。相手にするだけこっちが疲労する。
甲斐甲斐しく口に運ばれてくるおかゆだったが、半分ほど食べたところで僕の胃が受け付けなくなった。
「…も、食べられない」
「半分も食べただけで充分だよ」
残すのは申し訳ない…そう思っていた僕の頭をポンポンと撫でて、遥海は僕が残したおかゆをぺろりと平らげた。
「はい、おっけー」
「…風邪移るぞ」
「大丈夫だから、自分の心配しろよ」
柔らかく耳元で囁かれた声に、ドキンと心臓が高鳴った。
いつになく優しい遥海に熱もあいまって惚けてしまう。
ちゅっ...と振り返りざまにキスを落とされ、遥海はベットから降りて僕を寝かせた。
「...今日、どうするの?」
「ん?何が?」
「学校」
「あー、行かねぇよ」
「...行けよ」
僕の様子を見つつ椅子に座って本を読んでいた遥海に質問したら、当然と言わんばかりの流れで答えられ布団を握りしめた。
「行ってほしいの?」
本から視線だけ外して僕に向け、目を細めて甘く微笑む。
その目を睨み返しながら、呟く。
「...サボったら、ダメだ」
「一日ぐらい平気。俺、頭いいから」
「もしかしたら、今日めちゃくちゃ難しいところやるかもよ?」
「仮にそうだったら、ノート貸してもらうから大丈夫だ」
余裕そうな遥海に、他に何か言いたいことある?とでも言いたげに小首を傾げられ、赤くなっていそうな顔を隠すため布団に顔を埋めた。
「お前...友達いたんだ...」
「素直に行かないでって言えないのか?」
「うるさいっ!」
クスりと笑われ遥海に背を向けて、ふて寝をするように目を閉じた。
「ずっとそばにいてやるから。おやすみ」
そんな囁きを聞こえないふりをしていたら、気が付かない内に本気で寝てしまっていた。
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