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誰?─遥海side
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もっと泪を堪能したかったが、病人に無理をさせるわけにもいかずソファーに座らせた。
「食欲はあるか?」
「割とあるかも」
「リクエストは?」
「んー…うどんがいい!」
これも病人効果なのだろうか、普段より可愛げのある言い方に柄にもなくトキメキそうだ。
泪のリクエスト通りうどんを作る。その間泪はソファーで寝転びながら、バラエティー番組を見ていた。
汁が完成して後はうどんを茹でるだけという時に
──ピンポーン
部屋に来客が訪れた。
幸太からも達也からも部屋に来るという連絡は来ていない。
もしかしたら、天野とかその辺りか?
泪にはソファーで寛いでいて貰って、俺は玄関の扉を開けた。
「………?」
「あっ…こ、こんばんは!」
扉の前に立っていたのは知らない学生。緊張気味に裏返った声に加えてガバッと90度に頭を下げて挨拶された。
「…君、誰?」
率直な感想だ。
身長は俺より少し低いぐらいで、がっしりとした身体付きはスポーツをしているからだろう。黒髪で少しタレ目の至って普通の奴。
言い方は悪いが印象に残らない感じだった。
「は、初めまして…高野 健(タカノ ケン)っていいます…。あの…泪先輩が風邪で休んだって聞いて、お見舞いに来ました」
俺の顔色をチラチラ伺いながら、頬をほんのり赤らめるソイツ。
泪に先輩を付けるところから1年のようだ。
…気に入らねぇ。
下心丸見えのお見舞いにイラつきが募る。
俺と泪が同室なことはまだ知れ渡ってないのに知っていることも、俺がいるのに構わず来ることも俺の気に障る。
気弱そうなくせに、野心的みたいだ。
「へぇ、わざわざありがとう」
今すぐにでも追い返したい気持ちを抑えて、表向きの笑顔を向ける。
こういう時猫を被るのに慣れていて良かったと思う。
「あの…泪先輩は……?」
「あー…ちょっと会うのは厳しいかなぁ。部屋で寝てるから」
「そう…ですか…」
ちょっと部屋の中を覗かれたがリビングへの扉は閉まっているため、泪がソファーにいるのとはバレていない。
例えバレたとしても部外者を部屋に入れるつもりも無ければ泪に会わせるつもりもない。
「帰ってもらえるかな?」
棘を含んだ俺の物言いに気がついたのかどうかは微妙な所だったが、ソイツは手に持っていたコンビニの袋を差し出してきた。
「じゃあ…これ…ゼリー買ってきたので…渡してください」
「わかった」
「では…お大事に」
俺が袋を受け取ると、また大きく頭を下げて少し名残惜しそうに去っていった。
二度と来るなって言えばよかったな…。
手にあるゼリーも今すぐ捨ててしまいたい衝動に駆られたが、食べ物に罪はない。だけど、泪には渡さない。俺が食べる。アイツが来たことも絶対伝えてやらない。
俺の荒れた感情が現れたように、扉は大きな音を立てて閉められた。
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