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僕は違う
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遅刻ギリギリの登校だから近道としてグラウンドを通り抜ける。
こっちの方が少しばかり早く玄関に付けるんだ。
校舎にそって歩いていた僕達の前には綺麗な花壇がある。
けれど、不自然に花が倒れている所が1箇所だけあった。
何気なく覗き込むと、そこには何かが落ちていた。
「ん...?なにこれ?」
花をかき分け確かめると、僕たち二年生の数学の教科書だった。
この真上には教室があり、3組と2組のどちらから落ちてしまったのだろうか?
「誰のだ?」
遥海が落ちていた教科書をを手に取りパラパラとページを流し見ていたが、ふとその手が止まり嫌悪が顔中に現れた。
「どうかした?」
なにか下品な落書きでも見つけてしまったのかと思い、開いているページを覗き込むとそこには下品なんて甘ったれたものではなかった。
『死ねキモい』
『学校来るな』
『調子乗るなブス』
心無い言葉が乱雑に殴り書きされている。
よく見ると教科書はボロボロで水で濡れた後もあった。
頭に浮かぶ文字は一つ。
──いじめ。
誰かがいじめられている。2年生の誰かが。
「知ってたか?」
「知らない...全然...」
僕のクラスでは多分ない…はず。強いて言うなら、僕の立場が危うい感じだ。可愛い自分を演じるのに疲れて最近冷たく遇っていたせいだ。修正しないと。
僕のクラスではなく他クラスでいじめが起こっていたとして、それが全然噂にならないのは何でだ?
なんやかんや耳に入るのに…特に咲は噂に敏感で絶対報告してくるはずだ。
…じゃあ、最近始まったからまだ知れ渡ってないってことか?
あと考えられるのは…陰湿ないじめとか、周りに助けを求められないような気弱な奴がいじめられている…とかかな……。
何にせよ、知ってしまった以上僕も関係者になってしまった訳だ。
「許せないな」
「……まぁ」
正直…本当に正直に言うと関わりたくない。
僕は被害者でも加害者でもない。
こういったことに口を出したりすると、今度は僕が標的になるかもしれない。それはそれでとんでもなくめんどくさい。
まぁ僕ならやられたままでいるなんて我慢出来ないから、10倍ぐらいにして返してやるけど……。
でもやっぱり波風はなるべく立てず、敵は作りたくない。
しかも、斉之内遥海と付き合っているってことが知れ渡れば自然と敵が湧いてくるのに今から別の敵を作っておくのは得策じゃない。
そんな自己中な考えを持っている僕は、遥海の呟きに曖昧に答えることしか出来なかった。
「…気になるの?」
遥海もこういうことには首を突っ込みたがらない性格だと思っていた。
でも…結構本気で怒っているように見える。
「あぁ…気になる」
どこでそういう正義感を養ってきたんだよ。
僕の性格の歪みが浮き彫りになるじゃんか。
「2年生だろ?少し気にかけてやれよ」
「……うん」
遥海によく思われたいと思ったから、頷いた。
…助けたいという思いからじゃない。
歪んでいる僕に遥海は気が付かないまま、表情を緩め僕の頭をポンポンと優しく2回叩いた。
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