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それぞれが歌いたい曲を入れて、先発は前田くんだった。
思わぬ歌のうまさに僕と咲は拍手してしまったぐらいだ。
「前田くんって歌上手だね」
「歌だけな」
「勇ひでぇー!サッカーも出来るから!」
僕の発言に被せてきたのは相変わらず近い距離に座っている勇くん。
目の前の前田くんは咲にマイクを渡して座った。
咲の歌は元気な曲で咲らしい感じだった。
その次の勇くんも歌が上手で人気アイドルのラブソングを歌った。
イケメンは歌上手い生き物なのかな…?
じゃあアイツも上手かったりすんの?
えー下手だったら面白いのに。
今度カラオケに連れてこよーかなー。
「はい、次は泪の番だよ」
「ありがとう」
「俺の歌どうだった?」
若干上の空だった僕はとりあえず頷いて、ニコッと得意の笑顔を向けた。
「すごい上手だったよ。流石勇くんだね」
「さんきゅ」
ポンポンと自然な流れで頭を撫でられマイクを手渡された。
大きくてしっかりとした手なのに優しくて、でも少し雑な撫で方。
頭を撫でられるのは好き。
けど、この手じゃないなぁ。
マイクを手に勇くんの顔と手を確認した。
他の人じゃダメ。アイツの柔らかくて温かい手つきで触れられるのが好き。気持ちいいと思える。
この場にいない遥海と今いる勇くんを比較したってどうにもならないし、これから先勇くんに軍杯が上がることはないんだろう。
惚れた欲目…?
今歌っている恋愛ソングだって、ちょっぴり僕らの影を重ねて歌ってる部分はある。
どうしてか、すっごく会いたくなってきた。
毎日同じ部屋で過ごしてるのに、ちょっと変かも。
それでも今ここで時間を使っていることがもったいない事のように感じたんだもん。
勇くんと前田くんとの時間より遥海との時間の方が楽しいと改めて思っちゃった。
それか咲と2人っきりの方が気が楽だったなぁ。
あーあ…早く帰りたい。
思っていることとは裏腹に、決め顔で最後のフレーズを歌いきった僕に勇くんと前田くんは拍手をくれる。
上手い、可愛かったという褒め言葉を適当にあしらいマイクを置いた。
結局僕は知らない間に遥海のことばかり考えていた。
勇くんがいるという後ろめたさからか、それとももっと単純なものなのか。
どっちか定かではないけど、その後のカラオケも晩御飯も得意の笑顔で話しながら、僕の本当の意識は空中をさ迷っていた。
今日1日、何をしてどんな話をしたのかって聞かれたら多分10分の1も答えられない。
それぐらい上の空だった。
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