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ソレ
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「さてと…ずっとこうしていたいけど、アレを放っておくと後々面倒くさそうだ」
もっと抱きしめていて欲しかったけど、遥海が目線を向けた先には地面に横たわるゴミ。
多分遥海に蹴られてゴロゴロ転がりそのまま横腹を押さえて蹲っていたんだろう。
さっきまで僕の上で偉そうにしていたのにいいザマだ。
遥海は僕から腕を外して、僕のシャツのボタンを全て止めるとだるそうに立ち上がり僕の手を引く。
その手に引かれ、立ち上がり遥海の後に続いてソレに近寄った。
少しだけ遥海の背中に隠れて、繋いでいる手に力を込める。
「痛ッ……く……」
「いつまで寝てんだ。起きろ」
僕に向けていたモノとは比べ物にならないぐらい冷えきった声色、鋭い表情。
遥海の怒り具合はかなり大きいみたいだ。
「本気で蹴りやがって…ケホ…」
地面に這いつくばりながら恨めしそうに遥海を睨むソレ。
もちろん遥海は怯んだりしないけど、さっきの恐怖からか僕には充分な威力だった。
ギュッと腕にしがみつき顔を隠すと、僕の行動に気がついた遥海が僕のことを完全に背中に隠してくれた。
「他に言う事あんだろ」
「はぁ…めんど……」
「あ?」
「タイムタイム!暴力は好きじゃないんだけど」
遥海の怒りを逆撫でする気怠い態度は全く反省の色が見えない。
ソレは横腹を擦りながら立ち上がり、ヘラっと笑顔さえ浮かべた。
「いやぁ…まさか先輩が登場してくるとは思ってなかったわー」
「お前ふざけてんのか?」
「まっさかぁー。流石に先輩と喧嘩する気はないっすよ」
「既に喧嘩売ってんだろが!!」
こんなに声を荒げる遥海を初めて見た僕はその迫力に守ってもらっているはずが、びっくりしてしまう。
「ふふっ。マジ切れかよ、二人そろってキモ..。ドン引き」
ソレは詫びることなく人を蔑むように口角を上げ髪を掻き上げた。
遥海の拳に力が籠る。
「男同士だってこと理解してんの?頭大丈夫かよ。熱くなっちゃって、ダセェ」
「…理解してる。俺も泪も男だって理解した上で付き合ってる。別にお前の評価は必要ない、邪魔だ」
「うわうわうわ…ガチな奴じゃん。キモ過ぎて吐きそう」
「クソがっ!!」
わざとらしく口を手で抑えて変な声を出したソレに、遥海の我慢が限界を告げた。
「待って!!ダメ!!!」
ソレに詰め寄り殴りかかろうとした遥海の腕にしがみつき全力で止める。
「そんな安い挑発に乗る必要なんかない!!ゴミ野郎の言う事なんか気にしなくていい!!どうでもいい!!周りに何て言われてもいい!!」
お願い……こんな奴のために、悪者になるなっ!
こんな奴殴る価値もないんだからっ!!
「でもお前っコイツに押し倒されて──」
「遥海が来てくれて大丈夫だったから!」
言い返そうとした遥海を遮りぎゅぅっとしがみつきながら見つめてお願いだと懇願する。
まだ収まらない怒りと何か言いたげに口を開きかけたが、やがてはぁっと息を付いた。
「……分かった」
「イテっ…」
クシャっと僕の前髪を柔らかく崩したかと思ったら、デコピンが飛んできた。
不意打ちのデコピンに少し抗議の視線を向けると、今度は優しく撫でられる。
……ちょっとドキっとした。
「うわ……無理…」
そしてこのいい雰囲気をぶち壊すソレ。
というか、まだここに居たんだって感じ。
早く帰れや。言っとくけどお前の方が気持ち悪いし、ドン引きだから。
「いつまでそこにいんの?」
遥海は僕と同じことを考えていたみたいだ。
「2度と泪に近寄るな。次泪に何かしたら殺す」
「チッ…こっちから願い下げだ。んなホモ野郎」
絶対零度、本気の脅しに誰だって逆らえないだろう。
ソレも例外ではなく、捨てセリフを残して暗がりの公園から姿を消した。
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