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「最悪だ、傘なんて持ってきてねえよ…」
じめじめと湿気を含んだ大雨に溜息を漏らす。
バイトへ行く前は雲一つ無く、カンカンに晴れてたのにどうなってんだ。
5月の中旬頃だというのに、今年は梅雨入りが少しばかり早いのか?
天気予報を観てこなかった自分にむっとする。
「雅人、傘ないの?一緒に入る?」
そんな俺に救世主が現れた。
女の子なら尚更嬉しかったけど贅沢は言えない。
「あー…悪い頼むわ。こんな大雨じゃなかったらお前と相合傘なんて…」
「えーひどい!俺はいつでも雅人大歓迎なのに!」
プンスコしながらやたらと戯れてくるこいつは、牧野遥輝(まきのはるき)。
俺と同じ大学2年生。
昔は俺に引っ付き回る泣き虫野郎だったのに、今じゃ顔も体格も大人びちまって。
腹立たしいことに、こいつ目当てでサッカー部のマネージャーを希望する女の子が後を絶たないらしい。
よく学祭でミスター○○大の候補で出ないか?と誘われるほど爽やかな笑顔が評判なイケメン君である。
「じゃあ、黒宮くん、牧野くん二人とも気を付けて帰れよーお疲れさんー」
「「お疲れ様でした!お先に失礼します!」」
バイト先の店長に挨拶して、俺たちは狭い傘に身を寄せながら仲良く相合傘することになった。
冷え切った土砂降りの中、課題がどうだの単位がどうだのととしばらく他愛もない話をしながら帰り道を歩く。
そろそろ俺の下宿先ってところで、ふと遥輝が立ち止まった。
「ん、遥輝どうした?」
「………何か鳴いてない?」
「え?………ほんとだ。あそこの段ボールの中からか…?」
段ボールの中を覗くと薄汚れた猫が雨に打たれて震えていた。
猫は俺たちを見るなり、連れて帰ってくれと言わんばかりに残りの力を振り絞って鳴き出す。
「可哀想に……捨てられたのか」
「……このままほっとけないし俺、家に連れてくわ」
「えっまじで」
「だって見て見ぬ振りなんてできないじゃん。しかもお前が連れて帰るの無理だろ?お前んとこの母さん、猫アレルギーじゃなかったっけ」
「まあねえ………俺は大丈夫なんだけど、母さんもう蕁麻疹やらくしゃみやら酷くてうっさいの。ごめんけど雅人頼むわ〜」
「それはしゃあないって!俺一人暮らしだし、猫一匹くらい大家にもバレねえって」
遥輝に家まで送ってもらい、俺は急いで猫の汚れた身体を洗ってやり、タオルで包み暖めてやる。
猫は安心したのか次第に呼吸も落ち着き、すやすや寝始めていた。
「良かった………お前の名前どうしようか?雨の中拾ったから、雨ってどうだ。んー単純すぎ?」
俺の言葉に反応して一瞬猫の目が開く。
ブルーアイズで澄んだように美しい瞳だった。
「そうか、じゃあ決まりだな。雨、もう寝ようか」
今日は華金。
バイト先の居酒屋には、仕事帰りのサラリーマンやサークル飲みの学生達でごった返してたわけで閉店の時間までもう大忙し。
猫が無事だと安堵した瞬間、疲労感と睡魔がどっと襲ってきた。
明日はどうせ学校も遊ぶ予定もないんだし、お昼まで寝ていようと重い瞼を閉じた。
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