アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
10
-
「…?」
「れい?どうかした?」
「ううん…何か嫌な予感が」
ぶるり、と不気味な胸騒ぎに震えながら部屋へと戻った。
「ですから、うちにはそんな人居ません」
「嘘をつけ、噂をたどってきたんだから間違いなくここにいるはずだ」
理事長室にどっかりと座り込んだ男が、理事長に吸って居たタバコを突きつけた。
「さっさと出しな。悪魔の印を持ったガキをよ」
「…居たらどうするつもりなんですか?」
「決まってんだろ、殺すんだよ。俺も有名、ヒーローになれるし皆にも心の平穏が訪れる。WinWinだろ?」
「…悪い人だと決め付けるのはどうかと思いますが?」
「良い奴でも悪い奴でも関係ない。殺せば俺は勝ち組の仲間入りだ」
にぃ、と下品に男は笑ってタバコを灰皿に押し付けた。
「…れい?」
「なんか…寒気が」
「かぜ?」
「ううん、そういうんじゃなくて…」
心配するまりもをそっと抱きしめる。
何か、よくない気配…
「…萊」
そっと名前を呼ぶと、小さな蝶が一匹手に止まった。
蝶と言っても妖怪だが。
「何かよくない気配がするんだ…見てきてくれないかな」
「うん!」
元気に返事をした萊は、ぱたぱたと窓から部屋を出て行った。
「あくまで噂は噂でしょう。うちには居ません。お引き取りください」
「なんだよ頑なだなぁ、じゃぁ一人一人調べさせてもらうぜ」
「困ります、部外者にこの校内をうろつかれては。この学校の生徒が不安がりますから」
「ごちゃごちゃうるせんだよ。能力持ってるんだから不安なら自分で解消すりゃいいだろう」
「貴方も能力者なら分かるはずです。何でもできるわけではないと」
頬に鮫と書かれたその男は、それを聞いて笑った。
「なんでもできるさ。鮫は怖がらせてなんぼだからなぁ?お陰でこの学校にもすんなり入れたわけだ」
「…拉致があきません。どうかお引き取りを」
理事長が席を外そうとした瞬間だった。
「最近、あんた男を一人養子に入れたんだってなぁ?そいつなんじゃねぇの?」
なーんてな、と下品に笑う男。
「まぁ、隠してるのは自由だが?だったら1人ずつ殺させてもらうぜ?どれがあたりかわかんないからなぁ!」
「大変、大変!」
ぱたぱたと慌てた様子で部屋に舞い戻ってきた萊は、理事長室で会ったことを動画付きで説明してくれた。
「そっか…。やっぱり僕には平穏なんて無いのかな…」
ただ、普通の人と同じように、普通の生活を静かにして居たいだけなのに。
くだらないことで笑って、隠し事なんてし無くてもいいような生活を…
…ここを、出よう。
転校してきてまだ間もない。
別に思い入れもないが、煌にだけは僕のせいで危ない目に合わせたくなかった。
荷物はすぐにまとまった。
たいして量の無いそれを背負い、まりもをポケットにしまった。
扉に手をかけ、もう一度自分の部屋を眺める。
…もっとここに居たかったのに…
煌や皆と、一緒に…
…忘れよう。
煌のことも、皆のことも、養父のことも…
がちゃ、とドアを開けると目の前に煌が立っていた。
「どうした?どっか行くのか?」
「…何で、こんなところに?」
「お前と話したいなぁと思って」
そう言って無邪気に笑う煌の顔を見るのは辛かった。
もう二度と見られない、笑顔。
「悪いけど急いでるんだ」
そう言ってすれ違う瞬間、がしっと掴まれた。
「なに…っ?」
「その荷物…何で出て行くんだ?」
「…っ別に…何でも無い」
「なんでもないわけないだろ?そんなに辛そうな顔してさ」
ぎゅぅっと煌の胸板に顔を押し付けられた。
「どこ行くんだよ、真白」
「…わからない」
「じゃぁ、今、どこへ行こうとしてた?」
…煌には敵わない…
「…理事長室」
「何をしに?」
「…煌には関係ない」
「んじゃ、一緒に行っちゃお」
そう言うと、煌は僕をいとも容易く担いで歩き出した。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
10 / 28