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必ず。 side弌
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かちゃ、かちゃ。
フォークとお皿がぶつかり合う音が、静かな部屋を支配する。
今日は陽太の好きなハンバーグを作った。
でも、食べさせたいと思っていた陽太はまだ帰ってこない。
一口、ハンバーグを口に運び咀嚼する。
[今日は美味しくできたなぁ。]
寂しくて独りごちてみるけれど逆に辛くなってすぐにやめた。
金属と陶器のぶつかりあう音の中でひたすら自分でつくったハンバーグを食べる男。
なんて惨めな絵面なんだろう。
考えると考えるだけ虚しくなってきて、陽太が帰ってくることを願った。
陽太。
いま、なにしてるんだろう。
また違う誰かを抱いているのだろうか。
ー…俺以外の、誰かを。
昨日の夜遅く、陽太は身体から甘ったるい香りを漂わせて帰ってきた。
左の鎖骨に小さな鬱血痕も。
香水の匂いからして、昨日の相手は可愛らしい女の子だったのだろう。
[……ぁ…]
カチャリ、フォークを落とす。
思い出したら腹の奥から胃液がこみ上げてきた。
口に手を当ててトイレへ駆け込む。
急いだ為か椅子が倒れる音がしたけど、気にならなかった。
便器を抱え込むようにして必死に吐く。
[ぅ…げっ、ぇえ……ぅ、はぁ、は…]
一通り吐き終えると、涙がでてきた。
それは生理的な涙ではなくて。
[…っひ…よ、うた、っ…っく、…]
陽太はどんなに浮気しても、泊まって帰ることはない。
必ず、俺と暮らすこの家に、その日のうちに帰ってきてくれる。
必ず。
それが俺の心の支えだ。
それしか、なかった。
[っ…早く、帰って、きて…よ……]
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