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幸福な朝。 side弌
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あ。
きれい。
ふと目を覚ますと目の前には陽太の顔があった。
静かな吐息を漏らす唇は薄くて。
短いけれど量の多い睫毛が、寝ているときの眼球運動のせいで震えている。
きれい。
さっきまでひどく嫌な夢を見ていた気がするのだけど。
陽太をみるとそんなのすぐ煙の中にきえていった。
時計をみると陽太がいつも起きている時間の30分前。
起こさないようにそっとベッドを下りて、キッチンに向かった。
コーヒーメーカーをセットして、戸棚の中から栄養食品をとりだす。
陽太は朝ご飯は食べないタイプだ。
それに加えて俺はそんなに食に執着がないタイプだから朝はいつもこんな感じだ。
朝から脳を働かせるための、食事。
カチッとスイッチがなってコーヒーができあがる。
ブラックは飲めないから、ミルクをたっぷりいれたカフェオレにした。
そんなこんなで俺が朝ご飯とは名ばかりの栄養補給を終えると、陽太が起きてきた。
[おはよー、弌。]
[おはよう、陽太。]
起きたてもかっこいいな、なんて考えてると陽太がちゅ、と俺の首筋にキスを落とした。
瞬間、鼻腔に訴えかけるような甘ったるい、女物の香水の香りが広がる。
泣きそうにくるしい気持ちになるのに、頭のどこかで昨日は疲れてお風呂は入れなかったんだなぁ、なんて冷静なんだから反吐がでそうになる。
いつの間にか首筋へのキスは唇へと移動していて、舌を絡ませる深いキスに変わっていた。
[ん、……ふ、ぁ…んぅ……]
舌を甘く吸われて、甘噛みされる。
気持ちがよくって声がでると、満足したのか陽太は離れた。
[コーヒーの味した。]
[…ぇ、ぁ…。ごめん…?]
すると陽太はくすくす笑って、俺を抱きしめて耳元で可愛い、と囁いて。
俺が恥ずかしくてそっと離れると、陽太はまたにこっと笑ってから風呂場にいった。
泣きそうだ。
幸せな、朝。
なのに。
あの、香水の香りさえ、しなければ。
それでも、1日の中で一番幸せな、時間で。
俺は出てくる嗚咽をコーヒーで飲み下すことしかできなかった。
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