アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
初めてが終わった日。
-
「ちょっと…待って…。やっぱ無理…。」
「僕も寂しいよ…でもどうしても…帰りたいの。」
「嫌だ…」
「僕は考えを変えるつもりはないよ…。いつかまた…きっと会えるから。それまで待ってて?」
「………。」
「最初に好きになったのも…告白したのも僕だけど…ごめんなさい…」
鳴砂は言ってた通り、その日の帰りのHRで別れの挨拶をしていた。
きっと普通なら手続き的なのがあって時間がかかるもんだろうけど
鳴砂は特別だから帰る日の朝、担任に連絡して
色々済ませたのだろう。
俺は学校には行かなかった。
行けなかった。
やっと楽しくなってきた生活がまた逆戻り。
今まで通りのつまらない日常に戻る。
「太地くん。ほんとに少しの間だったけど…ありがとう…。」
防水のバッグの中に俺が買ってあげた
パジャマと歯ブラシ…そしてその他の服を詰め込んで
それを重そうに持っている。
そんなの持っていったって、海なんだから必要ないはずなのに。
「太地くん…」
「ごめん…。俺、見送りできない。」
「大丈夫!!一人でもちゃんと帰れるよ♪」
「う、ん…」
声が震える。
なんか明るい鳴砂。
なんでそんなに明るくいれんだよ。
「それじゃあ、ばいばい。」
「………鳴砂…ほんとに嫌だ…。」
「……ごめんなさい。さよなら、太地くん。」
玄関で最後のお願い。
…そんなものが鳴砂の固い意志を崩すことができるはずもなく
甘い香りを残して、鳴砂は出ていった。
少し重いドアが閉まる音が聞こえたと同時に
目から涙が溢れた。
あの時、和也の家なんか…行かなきゃよかった…。
殴ってでも…逃げればよかった…。
色んな後悔が頭の中をぐるぐる回る。
「…鳴砂……。」
こんな短期間で、俺の初恋は終わった。
………最後に…抱きしめておけばよかったな…。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
41 / 56