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類の会食
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類side
俺は瑞希の病室を出ると(正しくは追い出されると)瑞希にRINEを送った。
『今日は話聞いてくれてさんきゅーな!また来るわ( ^罒^ )/』
すると、数分もしないうちに返信が来た。いつも思うけど返事が早い。
『うん!こっちこそ、けぃくんがごめんね( >ㅿ人)無理やり追い出してたみたいで。お父さんや仁さんに自分の気持ち伝えなよ?がんばって(๑•̀∀- )وそれじゃあまた( ´ ▽ ` )ノ』
可愛い。なんか、いろいろと可愛い!!保存だな。
てか、弟くんのこと気づいてたんだな。まぁ、あいつそーいうのに鋭いくせに気づかないふりするんだよなー。まぁ、相手のことを思ってなんだろーが。
考えても仕方ない。今から父さんと兄さんとの会食があるから急ぐか。
母は俺が産まれてすぐ死別をし、食事も1人のことが多く、それを見越した父が1ヶ月に1度時間が作れた時には、父さんと兄さんと俺の3人で食事をする時間を作ってくれた。
父さんは病院の院長だけあって多忙の日々を過ごしており、昔から家に帰ることがほとんどない。
兄さんも次期院長として期待されており、帰ってくることが2週間に1回程度。
だが、この食事会も1ヵ月に1度は初めだけで最近では半年に1度あればいい方になっている。
「類。最近はどうだ?」
食事会場に入ると父さんと兄さんはもう席に着いていた。俺が席に着き、料理が運ばれてくると、父さんはお決まりの言葉を発した。
兄さんはもくもくと運ばれた料理を楽しみながらこちらの話に耳を傾けている。
手に汗を握り震える手をぎゅっと握りした。
「父さん……実は大事なお話があるんです。」
父さんは飲み物を1口、口に含めると真っ直ぐ俺の目を見る。
「あのですね……………」
「瑞希くんのことか?」
父さんは俺の心の奥を見透かしているように尋ねてくる。
「え!?………あ、そうではっ......……いえ、はい。そうです。瑞希のことです。」
違う。もちろん瑞希のことも気になる。でも、今は違う。みずきとも約束したのに。昔から父さんを前にすると思っていることが言えない。そんな自分に嫌気がさす。
「瑞希くんのことは担当医の仁に聞け。話はそれだけか。」
(違う。そうじゃない。言え。)
もう一度強く拳を握りしめ、父さんの目をしっかりと見つめた。
「瑞希の病気を治す可能性って今も1%以下なのですか?俺…瑞希のこと大事だから、瑞希の病気を治したいです!………でも俺にはその、医者になるための学力などなくて……」
父さんは何も言わず、ただじっと俺の次の言葉を待っていた。
「俺、軽音部に入りました!父上に部活は入るなと言われてましたが、どうしてもやりたいことができたんです。将来医者以外の道に進みたいと考えています。
どうか、お願いします。」
食事中と分かっていたが頭を下げた。こんな時にこんな事言って呆れるだろうか。でも、やっと言えた。
ダメかもしれない。けど、言わないままやるなら、言ってやるほうが後悔しない!
「そうか。」
父上は1言そう放つとまた食事の手をすすめた。
意外とあっさりしてた。これはどっちなんだろう。もっと怒られると思ってたから良かったー。
父さんはもくもくと食事を続けると、カタンと手を止め、ゆっくりと俺を見る。その顔は父親の顔ではなく、紛れもない神澤病院の院長としての顔であった。
「残念だが、瑞希くんの病気は今の医療技術では治らない。今は元気だが、いつ悪化してもおかしくない。私もできるだけのことはしている。それでも治らない……………」
父さんはいつもは見せない悔しそうな表情を見せたかと思うと、すぐに父親の顔に戻った。
「類。お前が今、何しようと私は口出しするつもりはない。軽音だの自由にやればいい。勉強は怠らないようにすればいい。だが、医者にはなってもらう。瑞希くんを助けたいんなら、本当にそのつもりがあるのならお前は医者になるべきだ。あの病院に跡取りがいなければ助かる命も助からない。小さい頃から言っているだろう。話は終わりだ。」
父さんはそれだけ言うと、立ち上がった。
「今から仕事だ。私は行くが、ゆっくり食べなさい。お前もだ。今日はこのまま類と帰っていい。」
父さんは兄さんに言葉を残すとさっさと店を出た。
やっぱり父さんは父さんだ。昔から何も変わってない。
「類。父さんの言っていることは正しい。昔から嘘はつかないからね。それでも類がやりたいなら僕は応援するよ。でも医者になるという道から逃げることは難しいからね。............それに父上は......」
兄さんはそれから何も話さず食事を済ませ、帰宅路についたのであった。
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