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一週間の命
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『瑞希くん、瑞希くん!聞こえてますかー?』
なんだろ。この声。
すごく懐かしい気持ちになるような、もう聞いていたくない雑音にも聞こえるような。
『瑞希くん?』
僕のこと呼んでるよね。でも返事するにも口がうごかない。
『あ、そーか。頭で言いたいことを強くイメージするのだ!』
イメージ?えっと………
(あなたは誰ですか?)
こうかな?
『お!やっと通じたー!!オイラの名前は………ない……なww』
゛ない゛?変な名前だな。まぁ、名前なんてどーでもいいんだけど。
(ないさん。ここはどこで、あなたはなんで僕に話しかけてくるんですか?それに、心で会話?してるし……)
『質問が多いなー……ハァ………。まず、1つ訂正しとくけど、オイラの名前は゛ない゛じゃなくてほんとに名前がないんだよ!』
(名前がない?なぜ?)
『瑞希くんは質問しなきゃ生きていけないのー?まぁ、いいや。名前はないけど最近ではナビって呼ばれているね!』
(ナビ……?)
『そーそー!あ、ここがどこか聞いたよね?ここは君の意識の世界だよ。僕は人の意識の中に入れることができる。別の言い方をすると生と死の狭間!別の国では神とも言われているんだよ!』
神って………。怪しすぎる。
意識の中に入てっくるっていうのが意味分かんないし。
まずは、ここから逃げ出さなきゃ!
………でもどーやって?
『あまり、ここのことは深く考えないほうがいい。それより、オイラが君に話しかけてる理由はね………』
お前の命を奪いに来たとか?もしかして、神と見せかけた死神?
でも、僕の命なんてはなから短かったし……
死神に持ってかれて死ぬのも案外いいかもしれない。他の人は体験したことなさそうだし。
『君の願いを1つだけ叶えに来たんだよ!』
願いを叶えに来たって……余計怪しいんだけど。
なに?やっぱり死神?3つ願いを叶えたら魂を奪う的な?あ、それは悪魔か?
まぁ、そんなことはどーでもいい。やっぱりどうにかしてでもここから逃げないと!
『瑞希くん?聞こえてる??』
(え!?あ、はい。)
『よかったよかった!あ、1つ言い忘れてたけど君が願いを叶えるまでここから出れないから、そのつもりで!それで、なにを叶える?』
出れない………逃げ道はないんだ。それに生と死の狭間。ということは…………。
『それに出たところで君は前にいた場所には戻れないよ。』
(ど、どーいうこと?………やっぱり……)
『君の考えてる通りかな!君さっきなにがあったか思い出してみなよ?』
さっき?……売店に行って、男の人にぶつかって、その人の落し物を届けるため公園に行って、病室に戻ろうと………
(やっぱり、僕死んだんだね?)
『ううん。まだ死んではいないよ。今は昏睡状態ってとこかな。』
(じ、じゃあ戻れないってどーいうことですか?昏睡状態ならまだ可能性が!)
なんとなく察しはついていた。でも聞かずにはいられなかった。
だって死と隣合わせでここまで生きてきたんだ。まだ、まだ生きていけるかもしれない。
でも、だからこそ真実を知りたい。
『君はこの意識の世界から出たらそのままゆっくりと目が覚めないままこの世を去るんだよ。』
そうなんだ。
『だから最後に君の願いを聞きに来たんだ。僕は主人を決めその人の望んだものを叶える。さぁ、願いは何?』
願いなんて……叶えたい夢なんて1つしか………でもそれは……
(あの、ひとついいですか?)
こーなったらイチかバチか!叶うかどうかは後回し!もう死んでしまうなら!!
『なーに?』
(病気を消したり、命の延命とかはできるんですか?)
『うん!そー言ってくると思ったよ!でも、残念なことに病気を消すことはできないんだ。』
やっぱりだめか。わかっていた。
幼い頃にその現実は受け入れていた。僅かな可能性も塵となって消えていくのが現実。
『君がこの世を去る事実は消えない。願いを叶えても君の命は消えてしまうんだ。』
(なんで?死んでしまうなら願いを叶えても一緒だよ!必要ない!!)
『そう思うのも仕方がないけどこれは運命。最後に君にチャンスを与えてるんだ。君ならいい決断をしてくれると信じて。』
そんなの必要ない。逆に辛いだけだ。良い決断なんて………何が良くて何が悪いか分かるわけない!
僕に期待しないでほしい。信じないでほしい。
でも、それでも僕を信じるなら………みんなが幸せでいてほしい。だから………
(みんなの記憶から僕を消してほしい。それでみんな幸せに…)
『残される人たちのために願うのもいいけど、それで君は満足できる?最後の最後にわがまま言ってもいいんじゃない?』
わがままなんて言えるわけない。
誰かに支えてもらわなければ生きられない。迷惑をかけ、心配をかけてしか生きることを許されない僕にわがままなんて………
(わがまま言ったところで病気は消えないんだろ?じゃあ意味がないじゃん。)
『諦めるのはまだ早いよ!病気を消すことはできないと言ったが、延命することができないとは言ってないだろ?』
延命か。それでも今の状態での延命でしょ。
今の状態なんてベッドでずっと寝てるだけの生活。もうさすがに飽きたよ。ふつーの生活がしたい。
ふつーに学校にいって、運動して、友達と遊んで……
『瑞希くん、いろいろ考えてるみたいだけど僕は君の願いを本気で叶えるつもりだよ。出来るだけのことはする。君の本気の願いが知りたい!さあ申してみよ!君の最後のわがままを。』
願いなんて……初めから1つしかない。でもこれは………言ってもいいのだろうか……
でも最後なら。もうこれで終わりなら。
(ナビ、僕の願いは……僕の最初で最後のわがままは………………………………………………。)
『承りました。その願いオイラが責任をもって叶えさせていただきましょう!やっぱり主人を君に決めてよかったよ。あ、最後に忠告なのが…………………………』
『それでは。もう会うことはないでしょう。奇跡の時間です。いいものにするも悪いものにするも君次第。さぁ開くのです。新たな1ページを。』
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