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奇跡の時間
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「瑞希!瑞希!!」
声がする。よく聞く声。とても心地がいい。
誰の声だっけ?
あれ?僕何してたんだっけ………
「瑞希!!!京ちゃん、瑞希が目覚ました!」
目がボヤーッとする。なんだろ体がいつもと違う?
なんかいっぱいいるな。類と京ちゃん先生?それにけいくんや姉さんまで……。
「瑞希君、聞こえる?私が誰だか分かるかな?」
「きょ…う……ちゃん……せん…せー?」
うまく喋れないような。あれ?さっきまで誰かと喋ってた気がするんだけど、誰だっけ?
「意識はあるみたいだね!良かった。」
意識………?意識の世界……。………ナビ………。
「あ!?」
思い出した!そういやナビに願いを叶えるって言われて真っ暗だった世界に明かりが見えてそれで………
「瑞希?どうした?大丈夫か?」
「類!僕もうすっかり元気だよ!どこも痛くないし、しんどくもない。みんなと同じ健康な体だよ!」
僕の目から涙がこぼれ落ちた。元気な体。病気が完全に消えたわけじゃない。けど本当に叶ってる。
「……あいつ本物だったんだ。」
そうと決まれば善は急げ!やっぱ最初は外に遊びに行く!
病気のせいで生まれてから病院の外に出たのは1、2回くらい。それも1時間という短い時間。
でも今は違う。
僕は勢い良くベットから飛び降りた。
「類、外に行こ!行きたいところいっぱいあるんだ!連れて行ってよ!!」
そうと決まればまずは着替えて、かばんに必要なもの詰めて、それからそれから。
「ちょっと待て!瑞希どうしたんだ?外に行くって……馬鹿なのか?お前皆が……俺がどれだけ心配したか分かってんのか!?」
部屋中に類のどなり声が響いた。
類がこんなに怒ってるの始めてみた。それに、こんなに辛そうに泣いているところも。
「瑞希君。類さんが怒るのも仕方ありません。私も心配したんですよ?」
京さんもいつもより真剣な目で僕を見た。
僕が5歳の頃からずっと担当してくれているが、いつもより厳しい口調。
なにやってるんだろ。僕。
うかれていた。僕が勝手に出歩いて倒れて、みんなに心配かけてたのに…………
馬鹿だ。
「京さん、類。それにみんなも。ごめんなさい。」
どうしよう。みんな怒ってる。
僕が無神経だったから。
「ハァーーーーーーーーーーー」
呆れてる。どうしよう。
な、なんて言えば……
「瑞希?もう怒ってないから。そんな悲しそうな顔するな。お前は笑顔が取り柄だろ?」
「そうですよ瑞希君。分かってくれればいいんです。もう無茶しないでくださいね?」
「にぃちゃん。もう大丈夫?しんどくない?」
「もうあんたは!心配かけて。無事で良かった。」
類。京ちゃん先生。けぃくん。姉さん。
「あ、あのね。みんなに言いたいことがあるの!さっき眠ってる時にね…………」
『あ、最後に忠告なんだけど、オイラのことや意識の世界のこと、願い事を話すとオイラとの契約はそこで終わってしまうから。絶対に誰にも言ってはダメだよ。』
そうだ。最後に忠告だって。
言ったら僕はこのまま………
「な、何でもない。でもね本当に元気なの!信じて!ねえ!!」
やっぱり信じてもらえないかな。みんなびっくりした顔してるし。やっぱりダメ………
「瑞希君。今から検査を行うよ。さっきまで倒れてたから確認も含めて。それで全部の検査で異常がなければ特別に外出許可を出すというのはどうかな?」
「京ちゃん先生いいの!?」
「瑞希がそんなこと言うの初めてだしな。俺も協力するよ。京ちゃんの許可が出たらな!」
類まで。
けぃくんもねぇさんも反対してない。
「本当にいいの?本当の本当に?」
自分で言ったのにやっぱり不安だ。
迷惑をかけるかもと頭をよぎってならない。
「検査で正常だったらだよ。瑞希君はいつもどこか諦めているようだったから外に出たいって言われて、君の担当医である私が本気で反対するわけ無いだろう?」
「ありがとう。ほんとにありがとう。」
ねぇさんが僕を優しく抱きしめた。
何も言わずに。
最後にやりたいこと。これから何をするか。
具体的には決まってないけどやることは1つ。
この奇跡の時間を大切にしようと強く思った。
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