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03 忍者捜索
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俺は忍が知りたくて翌週の昼休みに一組へ向かっていた。
「なぁ。佐古忍、いる?」
「え?佐古君?……あ、ねぇ、佐古君どこ行ったか知ってる?」
「佐古?あー…昼休みは屋上じゃない?」
「そ、サンキュ」
不思議そうに此方を見る忍のクラスメートからさっさと離れて軽い足取りで屋上へ向かった。
こんなに誰かに会いたいと思ったのは初めてだ…覚悟しろよ、佐古忍。
屋上へ辿り着いたものの、見渡す限りでは誰も居ない。
何処に忍んでいやがる、忍者め。
貯水槽の裏を覗くと、しっかり忍んでいた忍を発見。
もう食後なのか弁当の包みを横に置いて静かに読書中だったらしい。学ランの裾からセーターが少し出ている、やっぱり男なんだ。
『…え。…え、え?あ、阿久津君!?』
え。
むしろ俺が驚いた、何で俺の名前知ってるわけ。
『あ、あ、あの、誰か探してますか!?』
読んでいた本を勢いよく閉じて小動物がオロオロと脅えているけど、何故かちょっと嬉しそうなのは気の所為かな。
「佐古忍、探してた」
『佐古…佐古忍って、えええっ、ぼ、僕!?』
「うん、お前」
小さく三角座りしていた忍の目の前に胡座をかいて腰掛けたら、何故か慌てて正座に座り直した。
『あああああの、昨日はぶつかってしまって、その、ごめんなさい!』
昨日のデジャブ。
深々と頭を下げる忍の頭のてっぺんが此方を向いている。
俺が見たいのはそこじゃなくて、顔なんだけど。
「なぁ、お前さ…俺が何で探してたと思ってる?」
『え?ぶつかったから怒ってるとか…じゃなくて?』
「俺は別にヤンキーじゃねぇよ、あー…あれか、周りか。お前が怖いならもう奴等とはつるまない。」
『え?え?ええ?』
正座した両足にちょこんと両手を添えたまま此方を見上げるその顔も昨日のデジャブ。
やっぱり可愛い。男だってわかってても可愛い。何これ。
「お前、女装するの?」
『…あ。…………うん、じゃない、はい。』
あの時美術館で奴等が言ってた女装の話題が気になってて、本人に詳細を聞きたくて探してたのに本題に触れたらすごく傷つきましたって顔をして俯いてしまった。
しかもわざわざ敬語に言い直してまで。
知られたくないこと、なのか、やっぱり。
『気持ち悪い、です、よね。』
「は?」
『女装が趣味、とか、気持ち悪い…です、よね、僕…でも…』
「別に気持ち悪いとか思わなかったから。それとタメ口でいい、無理に敬語使うな…んで?でも、何?」
『………え?気持ち悪い、から、聞いたんじゃ…ないの?』
「ちげーよ。お前の事知りたかったから、名前調べてクラスに行った。そしたら昼休みは屋上だろうって言われて此処まで追って来た。それで?何で女装するの?女になりたいわけ?」
まともに会話をする為に言葉を沢山並べたのはどの位振りだったか。
驚く程自然に此処まで来た経緯を口にしていた。
ゆっくりでいいから、教えて欲しいと付け足したら、戸惑いながらも忍は自分の話をしてくれた。
小さい頃から母親に女の子用の洋服を着せられて、髪も長くて毎日お洒落をしていたこと。
女の子になりたいわけではなくて、自分は男だと理解した上で、女の子の格好をするのが好きだということ。
女の子の格好をしていると、母親にも周りにも褒めて貰えるから安心する気持ちがあるということ。
けれど、父親はそんな自分を気持ち悪く扱うので学校ではちゃんと男子の格好で振る舞い、家では母親だけの時は女装、父親がいる時は男子らしくいる生活を送っていること。
化粧は俺と同じクラスの雛瀬(ひなせ)という男子に教わっているということ。
『雛瀬君はね、すっごくお化粧が上手なの!やり方も丁寧に教えてくれてね、女装が見違える位に質が上がるんだよ』
雛瀬を余程に尊敬しているのか、さっきまでの怯え方が嘘のように両手に拳を握って目を輝かせている。
確かに居たな…化粧してる変な男子。やたら綺麗な顔してるけど、忍みたいに女に見間違えるとかじゃなくて、美少年って感じ。
周りに興味がなかった俺でも脳裏に過ぎらせることが出来る人物のことを一生懸命説明する姿を見ていたら、何だかムカムカしてきた。
妙な苛立ちを覚えた俺はこの気持ちを知っている。
ヤキモチ、だ。
この顔を俺の事を想ってさせたい。
そう思った瞬間に、俺は忍の手を取っていた。
「なぁ、その女装でデートしようぜ」
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