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06 居心地
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『なにニヤニヤしてるの?』
「うん?淡い初恋のこと思い出してた」
一日の締めくくりであるホームルームを懐かしい思い出の回想で終えて、担任の話など何も聞いていなかった俺はそのままニヤついていたらしく、迎えに来た忍の声で現実に引き戻された。
まさか自分のことでそんな顔をしているだなんて想像できないのか当の本人は勘違いして膨れている。
『…何それ。いつの話?』
「お、ヤキモチー?」
『そうだよ、い、つ、の、話?』
「そんなに怒るなよ、中1の秋位の思い出を大事にしてるだけなんだから」
『……バカ、僕の方がずっと好きなんだからね』
「おい、バカップル。見回り行くぞ」
いつの間にか手を取り合っていちゃつく楽しい時間を遮ったのは、同じ風紀委員の山水。
邪魔するなよデカブツ。
「アイス食いに行く約束してるから早く終わらせようぜ」
「俺も早く返りたいから、その提案乗った」
『山水君もデート?』
「え、何。お前彼女いたの?」
「いや。付き合ってはないけど、迎えに行きたいから」
『えー他校生なんだ、どこ高?』
「教えない」
忍と出会ってからずっと毎日が楽しい。
中2の修学旅行も、毎日の細やかな下校デートも、日曜日の女装した忍とのデートも、同じ高校に行こうと決めて一緒に受験勉強をしたことも、晴れて難関と言われたこの高校に二人揃って優秀な成績で入れたことも、そして、今この瞬間も。
『山水君も協力してくれたし、早く終われて良かったね~』
「何食おうかなー」
『たっくんはキャラリでしょ?』
「お前は抹茶?」
『「ほんと、相変わらず似合わないもの選ぶ」ね』
ほろ苦いものが好きなお前と甘いものが好きな俺。
好きなものも苦手なものもちゃんと知ってる。
だから話をするのが楽しいし、知ることが理解する事が幸せに思える。
分かり合えて笑い合える、穏やかな時間をお前に貰ってる。
こうしてずっと忍と一緒に過ごして、笑っていられると思ってた。
何も変わらないと思ってた。
ずっと
一緒にいられるって
そう、思ってた。
この時までは。
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