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08 音信不通
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病院へ行くと早退した日、声のこともあるのでメールでどうだったか尋ねると、返事は【何でもない、大丈夫】のみ。
その日はゆっくり休めとだけ伝えて連絡を途絶えたが、次の日も、次の日も。学校サイドは体調不良、忍本人は大丈夫としか言わない。
そんなやるせないやり取りが一週間続き、心配が募った俺は何度も行ったことがある忍の家を訪ねていた。
インターフォンに対応してくれたのは、忍の母親だった。
「あら、お見舞いかしら?どうもありがとう、大した事はないの、大丈夫よ」
「忍君に会うことは出来ませんか?」
「誰とも会いたがらないからそれは出来兼ねるわ、ごめんなさいね」
誰とも会いたがらない?
しかもインターフォン越しとはいえ、この抑揚のない話し方に違和感を覚えた。何か起こっている。
「わかりました、お大事にとお伝えください」
「承ったわ、処で、貴方のお名前は?」
「阿久津 竜樹といいます。忍君と親しくさせて頂いていました、今後とも宜しくお願いします」
「竜樹くん…そう。機会があれば仲良くしてあげて。忍の為にわざわざありがとう」
失礼します、とインターフォンに一礼してその場を離れるが、恐らくあの母親は俺が来訪したことを忍に伝えない。
何があった、忍。
【忍、今日はちょっと寒いな。部屋にいてもちゃんと暖かい格好しとけよ】
【今日は化学の篠山が実験失敗。あいつ何であんなにドジなんだろうな、笑える】
【家の前にいるよ、窓からちょっとだけでいいから顔見せてくれない?】
【今日もちょっとだけ家の前で待つ。気が向いたら顔だけ見せて】
毎日、毎日、あれから一日も欠かさずに忍にメールをした。
家に行った日からパタリと途絶えた返事からそれきり、一回も返事は返って来ないけれど、毎日学校帰りに忍の部屋の前で待ってみた、いつかそのカーテンの隙間から顔を覗かせてくれるかもしれないって。
だから、俺は雨の日でも関係なく毎日30分じっと耐えれる。
気付けば季節は冬真っ盛りに突入していて、クリスマスは忍の部屋の前で【メリークリスマス】と相変わらず返事の来ないメールだけで終わってしまった。
今年のプレゼント、一緒にペアリング買う予定だったじゃん?
ひとりで買いに行って決めちゃったけど、やっぱ怒るかな。
それと、今年の年越しは一緒に居られないのかな。
なんて希望に満ちた呑気な発想を巡らせて忍の部屋を見つめていた。
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