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09 ライバル
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年が明けても忍は何も変わりなかった。
自分の机に項垂れては深く溜息をついてふたつの指輪を指先で弄んでいると、ふっと頭上に陰ができて視線を上げると山水恵二朗がこちらを見下ろしていた。
「どした」
「まだ佐古は出て来ないのか」
「委員会だったら俺が2倍頑張るわー悪いな」
「いや…それはいいけど」
「…なに」
「うーん」
「言えよ」
あまりに濁すってことは何か、ある。
身を起こして強く視線を向けると恵二朗は罰が悪そうに項を掻いた。
「あー…俺、逢坂高校に行くだろ?」
逢坂高校、恵二朗がいつも迎えに行くやつが通ってる共学の高校だ。確か、アイツの進路は逢坂高校だと忍から聞いた記憶があって。嫌な事を思い出したと舌打ちする俺を気にすることなく続ける恵二朗。
「そこに、佐古いたぞ」
「は?ひとりで?」
「いや、ものすごい美少年と一緒だった」
「……そいつ、化粧してなかったか」
「化粧?…ああ、してた…って、何だ知り合いか。それなら俺が口挟むことじゃなかったな、悪かった」
「や、聞けて良かった」
「どこいくんだ?もう昼休み終わるぞ」
「早退する」
「逢坂なら俺も放課後行くから付き合うけど」
「ちょっとふっかけるつもりだからいい、教えてくれてサンキュ」
まだ何か言っている恵二朗を無視して鞄を抱え一目散に玄関へ向かおうとすれば、今度は面倒な奴が目の前で立ちふさがる。何だよ、今日はついてねーな。
「仮病で早退?」
「そーだよ、何か文句ある?あるか。生徒会だもんな」
「別に君の単位がどうなろうと関係な…あ、そうだ。君のお姫様」
無視して横を通り過ぎようとして耳打ちされた単語に思わず固まった。こいつも何か知ってるのか。
「それだけは耳を貸してくれるんだね、まあ別に構わないけど」
「で?何知ってるわけ」
「そんなに怖い顔してくれるなよ。彼、随分と休んでいるみたいだね。体調は確かに悪そうに見えたけれど…休むほどじゃなさそうだよね、何かあった?」
「どこで、見た?」
「ん?ああ、コンビニ。知り合いがバイトしているからよく行くとこに結構出入りしてるみたいだよ」
「それ、どこのコンビニ」
「知らない、のか。じゃあ言えない」
「雛瀬と一緒に居るから、か?」
「雛瀬君と知り合いなの?それなら、いいか。彼のバイトの後によく一緒にいるのを見かけるよ。んー最近はまた見かけなくなったけれど、11月の終わり頃は頻繁に…って言わせといてその態度?」
くそったれ生徒会野郎の言葉を最後まで聞いていられなかった。
忍、どうして雛瀬と一緒に居るんだ?
俺と連絡取らないのは雛瀬がいいから?
ぐるぐると回る思考を振り切りたくて足を速めた。
逢坂高校に辿り着くともう午後の授業が始まっているのか校門付近には人が居なかった。
此処で待ち伏せしていようか、そう思っていたら…
「よう、雛瀬」
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